開業医の1日のスケジュール・診療から経営業務までを徹底解説!

医者のキャリア

開業医の1日のスケジュール

「開業医になったら、どんな働き方をするのか知りたい」
「開業医になるメリットとは?」
開業を考えている医師で、上記のような疑問を抱いている方もいるでしょう。
医師の働き方は勤務医や開業医、研究者など様々です。自身の専門性を活かして、地域に根付いた医療を提供したいという想いから、開業を目指す医師も多いです。厚生労働省の2020年の調査によると、全国の医師の総数は約34万人で、そのうち開業医は約7.3万人で、医師のおよそ20%が開業医として働いています。

いざ開業を考えたときに「開業医の働き方やタイムスケジュール、年収」など気になる点が多いかと思います。開業後、経営を安定させるためには、事前に開業医の業務や成功するための方法を知っておく必要があります。

そこで本記事では、開業医の業務に対する理解を深めるために、一般的な1日のスケジュールや開業医のやりがいなどを解説します。開業を成功させるためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

開業医の主な業務は?

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開業医は、独立してクリニックや医療機関を開業することで、勤務医では経験したことがない業務が増えます。開業医の業務は多岐にわたりますが、一般的に以下のような業務があります。

  • 患者の診察
  • 手術と処置
  • 経営業務
  • 緊急対応
  • 地域との連携

勤務医では、与えられる仕事を行うことで評価されます。しかし、開業医は医師としてのスキルを向上させながら、経営に関する業務もこなさなければいけません。
開業医の業務について、以下で詳しく説明していきます。

患者の診察

外来での患者の診療は、開業医の主な業務です。患者の状態を診断し、適切な治療を行います。必要に応じて検査を行い、症状に応じて治療方針を決定します。患者の診療は、勤務医のころと同じです。開業したクリニックにもよりますが、症状によっては、専門の病院を紹介します。

開業医はとくに、患者との関わりが重要で、十分にコミュニケーションをとる必要があります。なぜならば、「かかりつけ医」になるために患者との信頼関係を築くためです。

手術と処置

開業医は基本的に外科的な手術は行わず、外来の診療が中心です。ただし、軽度な手術や傷口の縫合など、簡単な局所麻酔での手術や処置を行うことがあります。クリニックで行えない手術や処置が必要な場合は、専門の病院を紹介します。

経営業務

開業医は、医療業務だけでなく、一社長となり経営業務も行わなければいけません。スタッフの採用や設備の維持、保険請求、経営戦略の策定などがあります。効率的なスケジュールの管理や診療録の適切な管理も大切です。
経営に関する知識は、開業前よりしっかり身につけ、医師としてのスキルと経営のスキルをバランスよく持つ必要があります。

緊急対応

開業医も緊急性のある患者の対応を迅速に行う役割があります。急変時には、適切な初期対応を行います。自分の医院で対応できない場合は、適切な医療機関を選択し、受診を促します。他の病院に紹介した場合は、紹介先で的確に治療が行えるように、患者の情報を十分に報告する必要があります。

地域との連携

開業医は地域との緊密な連携を築かなければいけません。「かかりつけ医」として、地域の健康ニーズを把握し、健康教育や予防プログラムを提供する役割を担っています。地域の住民と連携を深めるために、地域イベントへの参加や健康相談などを行います。

また、近隣の医療機関や専門医と連携して、必要に応じて患者を紹介します。クリニックで対応できない手術が必要な場合、手術ができる病院を紹介します。逆に、術後は経過観察を依頼されるなど、クリニックと紹介先の病院がともに有益な関係を築くことが重要です。

開業医の1日のスケジュールと流れ

開業医の1日のスケジュール

現在は、24時間診療を行っているクリニックも少なくはありません。診療時間は、開業した医師によって自由に決めることができます。しかし、多くのクリニックは、朝9時から18時まで診療を行っています。一般的な診療時間での、大まかな1日の流れは、以下の通りです。

  • 6:30 起床
  • 8:00~9:00 出勤・準備
  • 9:00~13:00 診療開始
  • 13:00~14:30 昼休憩
  • 14:30~18:00 午後の診療
  • 18:00~19:00 閉院準備
  • 19:00 退勤

それぞれの時間帯について、詳しくご説明します。

6:30 起床

起床時間は個人差があります。通勤にかかる時間、診療前の準備、診療の開始時間を考慮して起床時間が決まります。とくに、診療の開始時間によって、起床時間は変わってきます。

8:00~9:00 出勤・準備

クリニックに到着し、診療準備を行います。予約の患者の情報収集や診療に必要な資料の準備などをします。診察を開始する15分前ごろには、スタッフと朝礼を行い、1日の流れの確認などの打ち合わせがあります。

9:00 診察開始

クリニックに来院した患者の診断や治療を行います。他に医師を雇っていない場合は、すべての外来患者を1人で診療することになります。

13:00~14:30 昼休憩

休息を取り、食事をします。必要に応じて、診察中に気になった患者の状態の再確認や他の医療機関と連絡を取ります。多くの業務に追われることがありますが、しっかり休憩をとり、効率的な診療を行えるようにすることが大切です。

14:30~18:00 午後の診療

午後も午前中と同様に患者の診療を行います。クリニックによっては、週に1度ほど診療をお休みしているところが多いです。平日のクリニックの休診日には、地域を往診するなど行っている開業医もいます。

18:00~19:00 閉院準備

診療録の整理やスタッフのシフト調整、設備の点検などを行います。開業医は診療以外の業務もあり多忙ですが、クリニックの経営には必要不可欠です。

19:00 退勤

すべての業務を終わらせ、帰宅します。

開業医の休日の過ごし方

開業医の休日の過ごし方

開業医は休日がどのくらいあり、どのように過ごしているのでしょうか。クリニックの場合、日曜日や祝日は休診にしているところがほとんどです。しかし、日曜日に診療を行っているクリニックもあります。

多忙な業務である医師は、なかなかプライベートな時間が取れないということは珍しくありません。
それでは、開業医の休日について解説していきます。

休日は自分で決める

休診日などは自分で決めることができるので、休みを自分のライフスタイルに合わせて設定しやすいです。計画的に長期の連休も取ることができます。休日を決める際には、経営とのバランスを考慮しなければいけません。また、患者の緊急の状況に対応する準備も必要です。

しかし、休日を自分で決定できることは開業医になることのメリットであることには間違いありません。

ON/OFFをしっかりつけてリフレッシュ

開業医になると休日を自分で決めることができますが、経営に関する業務に追われ、勤務医のころとは異なる精神的ストレスを抱えます。そんな開業医にとって、ON/OFFを切り替えることはとても重要です。職場であるクリニックを自宅と兼務している開業医はとくに、ON/OFFを切り替えることが困難でしょう。

開業医がしっかりリフレッシュするために、環境を整えましょう。仕事と離れることができる時間や場所を確保することをおすすめします。しっかりリフレッシュし、ON/OFFを切り替えることで、効率の良い経営につながります。

開業するなら地方?都市部?

開業するなら地方か都市部か

「地元に帰って、地域医療に貢献したい」などの理由で、地方で開業を目指す医師もいるでしょう。しかし、地方で開業しても大丈夫なのか不安な要素は多いですよね。

そこで本項では、開業した場合、地方と都市部ではどのような違いがあるのか、地方での開業医の年収はどのくらいなのかを説明していきます。

地方と都市部の違い

都市部は競合が多いというのは、容易に想像できることでしょう。では、地方での開業はどうでしょうか。
地方のクリニックは高齢化などにより、減少傾向にあります。医師がいない地区も存在します。そのため、地域の住民は遠くの病院へ通わなければならず、かなりの負担を強いられています。
つまり、地方での開業医のニーズはかなり高いです。都市部のように競合が少ない、もしくはないこともあるので、開業と同時に集患を見込むことができます。

さらに、地方では初期費用も抑えることができます。地方は都市部に比べ、人件費や賃貸料が低いため、毎月の固定の支出も抑えることができます。また、保険診療であれば全国どこでも保険点数は同一のため、集患さえ見込めば地方のほうが収益性は高いです。

地方で開業した場合の年収

地方での開業医の年収の方が、都市部に比べて高い傾向にあります。その要因は、地方の医師不足です。競合のクリニックがないため、一部のクリニックに患者が集まり、収益を上げやすいです。さらに、前述したように人件費などの固定費が低くすむので、利益を上げることができます。

開業医のやりがい

開業医のやりがい

開業医は医師であっても、経営者でもあります。そのため、勤務医のころとは異なる悩みや苦労が増えることがあります。しかし、開業医ならではの、やりがいもあります。以下では、開業医の年収やメリット、さらにデメリットについても解説します。

開業医の年収

開業医の年収は、地域や専門性、クリニックの規模によって異なりますが、勤務医に比べ高い傾向にあります。
厚生労働省の調査(2019)では、開業医と勤務医の年収は以下のようになっています。

  • 開業医の平均年収:2763万4111円
  • 勤務医の平均年収:1490万8542円

参考:厚生労働省,「第22回医療経済実態調査」令和元年実施

開業医は勤務医に比べ、およそ2倍近くの収入があります。
しかし、開業医はこの収入から開業時の借入の返済をおこわなわなければいけません。また、クリニックの修繕費などを見越して、積み立てをしておく必要があるため、収入のすべてが自分の手元に残るわけではありません。

開業医のメリット

開業医のメリットは、以下の3つです。

  • 自分の判断や決定で仕事ができる
  • 年収が高くなる
  • 地域の医療に貢献できる

いずれかのメリットが、開業したいと思った理由になっているようです。

自分の判断や決定で仕事ができる

勤務医と大きく違う点として、自分の裁量で仕事ができることです。勤務医の場合、決められた機器や薬を使い、与えられた仕事を行うことが多く、自分の考えで仕事をすることが難しい場合が多くあります。しかし、開業医だと診療所の理念や方針など、自分で決めることができます。責任と適切な判断は必要ですが、仕事面での自由度は広がります。

また、診療の時間や休日も、自分の生活に合った働き方ができます。さらに、一緒に働くスタッフも自分で採用するため、人間関係で悩むことが少なくなります。

年収が高くなる

前述したように、開業医では収入がアップする可能性があります。勤務医では収入は安定していますが、頑張っても変わることがないのがほとんどです。

開業医の収入がアップするためには、もちろん患者数が多くなり、経営が軌道に乗らなければいけません。そのためには、専門性を強化するなどの経営の戦略を行っていく必要があります。戦略がうまくいくことで、開業医は収入をアップさせることができます。自分の努力が収入に直結する点は、開業医のやりがいの1つでしょう。

地域の医療に貢献できる

開業医は、患者の診療だけでなく、予防接種や定期健康診断など、地域全体の健康を促進する重要な役割があります。いわゆる「かかりつけ医」となり、生活習慣の改善にも取り組みます。教育機関などでの校医や在宅診療を行う開業医もいます。開業医によっては「地元の医療に貢献したい」という志をもって開業することもあるようです。

さらに、急患に対する救急医療の提供も開業医は行います。地域全体の健康を向上させる役割を開業医は担っています。

開業医のデメリット

開業医になることでのメリットは大きいですが、開業する際にはデメリットも考慮することが必要です。
開業医のデメリットを2つ紹介します。

  • 経営が困難になるリスク
  • 過重労働になるリスク

自分の努力や十分な計画によって、リスクを抑えることはできます。リスクを最小化することは、開業医として成功するために重要です。

経営が困難になるリスク

経済的なリスクは、開業を考え始めた時から想定しているリスクでしょう。新規の開業は、先行き不透明であるため、開業したくない大きな理由となっているようです。

患者の数が安定するまでは、収入が不安定な時期があります。経済的なリスクを最小化するためには、集患のための計画が必要です。例えば、地域の健康イベントへの参加などを行います。地域の住民との接点を増やし、診療所の知名度を高めます。開業医は診療だけでなく、経営困難に陥らないための日々の努力も必要となってきます。

過重労働になるリスク

開業することで、労働時間が過重になることがあります。開業医は患者の診療だけでなく、経営や労務、経理なども行わなければいけません。人員を確保し、医療行為ではない業務を分担することで、業務の負担を減らすことはできます。しかし、スタッフを雇うと人件費が必要となるので、開業の当初は難しい場合もあります。労働時間が長くならないように、仕事のバランスの調整が必要です。

クリニックの開業を成功させるポイント

クリニックの開業を成功させるポイント

医師が開業を考えたときに、何より一番に気になる点は「開業が成功できるかどうか」ではないでしょうか。調査会社の帝国データバンク(2021)によると、廃棄件数は約470件、倒産件数は約20件という報告があります。開業するからには、安定した経営をしていきたいでしょう。
クリニックの開業を成功させるためには、医師としての専門性だけでなく、経営の能力や患者の満足度を向上させるなど、様々な要因がポイントとなります。
クリニックの開業を成功させるポイントを5つ挙げます。

  • マーケット調査とニーズの分析
  • 開業場所の選択
  • 資金の確保
  • 患者の満足度の向上
  • 地域コミュニティへ参加

以下に、各ポイントについて説明していきます。

マーケット調査とニーズの分析

開業する地域のニーズを把握する必要があります。地域の医療機関や人口数、住民の年齢などを調査しましょう。集めた情報を元に地域の特性に合わせた診療を行うことで、患者は自然と集まってきます。

例えば、高齢者が多い地域では高齢者向けの診療を行う、外人が多い地域では文化の理解と言語サポートなどです。地域に貢献するとともに、経営を安定させる要素となります。地域のニーズを把握した上で、クリニックを開業すると集患しやすいです。

開業場所の選択

クリニックを成功させるためには、場所選びも重要な要素です。自宅とクリニックを兼業する場合を除いては、自宅からの勤務時間を考え、場所選びをする方も多いのではないでしょうか。勤務時間を考慮する以外にも、開業を成功させるためには、患者のアクセスや競合の状況を視野に入れることをおすすめします。公共交通機関の利用や車でのアクセスの良さなど、患者がクリニックにアクセスしやすいことを考慮しましょう。

また、開業する診療科目によって、場所選びは異なってきます。例えば、小児科を開業する場合、高齢者の多い地域ではクリニックを行なっていくのは難しいでしょう。地域の状況を調査し、地域のニーズにあった場所を選ぶことも開業を成功に導くポイントになります。

資金の確保

クリニックを開業する前に、具体的な経営計画を立てることが重要です。
まず、建物や設備、必要な医療機器などの初期投資が必要です。開業後は、スタッフの給与や家賃、保険料など運営に関する費用がかかります。また、予期せぬ事態に備えて、資金を準備しなければいけません。
具体的かつ適切な資金調達の計画がなければ、財政的な問題が発生し、クリニックを存続させていくことが困難になる可能性があります。開業を成功させるためには、必要な資金を確保することが重要です。

患者の満足度の向上

質の高い医療を提供し、患者に丁寧な対応を心がけましょう。もちろん患者は、自分の疾患や症状の緩和を望んでいるので、質の高い医療を期待しています。さらに、患者は「かかりつけ医」に対して、医療の質だけでなく信頼の深さを求めることがあります。患者は態度が悪い医師のクリニックは、訪れません。治療や診断に真剣に取り組むのはもちろん、患者とのコミュニケーションを良好に保つことを心がけましょう。

地域コミュニティへ参加

地域コミュニティへの参加は、開業を成功させるためには不可欠です。地域と連携により、患者の数を増やし、地域や患者との信頼を築きます。地域との関係を構築することで、口コミや紹介が増え、患者の数が増えてきます。健康イベントを開催して、知名度を向上させることもよいでしょう。地域コミュニティへ参加し、地域の信頼を得ることで、開業を成功へ導きます。

開業医に向いているドクターは?

開業医に向いているドクターは?

医師として優秀であっても、開業医に向いているかは別の問題です。全ての医師が開業医に向いている訳ではありません。
開業医に向いているドクターの特徴は、以下の3つです。

  • マネジメント力の高い人
  • コミュニケーション力の高い人
  • 地域医療に貢献したい人

自分が開業医に向いているかどうか、客観的に評価して、クリニックの開業を検討しましょう。

マネジメント力の高い人

開業医は将来を見越した戦略を立てる能力が不可欠です。また、スタッフを率いるリーダーシップや迅速で正確な意思決定をする能力も必要となります。マネジメント力に欠けていると思う方は、医師としての専門的な知識の習得だけでなく、マネジメント力を高める努力を行いましょう。

コミュニケーション力の高い人

患者だけでなく、一緒に働くスタッフとコミュニケーションを取ることは大切です。

患者がいなければ収入は減り、スタッフがいなければ1人だけでクリニックを営業していくことは困難です。患者やスタッフがいるからこそ、開業を成功させることができます。開業医はコミュニケーションのスキルを高め、患者やスタッフと信頼関係を築いていくことも、クリニックの成功に必要なことです。

地域医療に貢献したい人

開業医は地域に貢献する役割を担っています。地域の健康ニーズに応え、質の高い医療を提供することで地域全体の健康水準を向上させなければいけません。

患者から信頼を得て、長期的な関係を築き、個別にケアを行います。また、地域と連携をとり、予防プログラムや健康啓発運動などを実施します。地域の健康を直接支える役割があり、地域に貢献したいという高い意識がある医師は、開業医に向いているといえます。

まとめ

開業医の1日のスケジュールのまとめ

本記事では、開業医の1日のスケジュールや業務内容、開業を成功させるポイントなど、開業医に関する情報を詳しく解説しました。将来、開業を考えている方は、事前に開業に関する情報を集めておきましょう。

開業医は経営者としての役割が増えるため、多忙な労働になる可能性があります。しかし、自分の裁量で仕事ができ、地域の住民の健康を支える要となります。さらに、自分の努力次第で、年収アップも可能になります。

開業するメリット・デメリットをしっかり考慮して、自分が理想とするクリニックを実現させましょう。本記事が開業医として成功するための一助となることができれば幸いです。

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