「医療機器の販売や貸与をするために、どのような資格が必要?」と悩んでいる人はいませんか?
少子高齢化や医師不足により、今後も需要が高まると考えられている医療機器業界。これから新規参入し、医療機器の販売や貸与をする営業所の開設を考えている人も少なくないでしょう。
この記事では、これから医療機器を販売や貸与する事業所の管理者に向け、必要な医療機器の基礎知識や資格の取得方法について解説します。
医療機器販売の資格取得で知っておくべきことは?医療機器クラス分類について解説
不備が起きたときに人の体に対するリスクの高さによって、下記のように「一般医療機器」「管理医療機器」「高度管理医療機器」の3つに分類されます。また「特定保守管理医療機器」はすべての分類のうち保守点検などが必要な医療機器のことです。
取り扱う医療機器 | クラス | 人体に対するリスクの高さ |
一般医療機器 | クラスⅠ | 低い |
管理医療機器 | クラスⅡ | 比較的低い |
高度管理医療機器 | クラスⅢ、Ⅳ | 高い |
特定保守管理医療機器 | クラスⅠ、Ⅱ、Ⅲ、 Ⅳ | 高い |
医療機器の特徴について詳しく解説します。
分類の前に医療機器の定義について知りたい方は「医療機器の定義ってなに?4種類に分類しながら解説!」を参考にしてください。
一般医療機器
「一般医療機器」とは、医療機器に故障や不備などが生じても、人体にリスクが低いものです。
一般医療機器には下記のようなものがあります。
- 医療用セッシやハサミなどの鋼製小物
- 視力補正用眼鏡
- メス
- X線フィルム
- 視力表
- 絆創膏
- 手術などで使われる滅菌ガーゼ など
一般医療器は「クラスⅠ」です。
管理医療機器
「管理医療機器」とは、医療機器に故障や不備などが生じても、人体にリスクが比較的低いものです。
管理医療機器には下記のようなものがあります。
- 家庭用のマッサージ器
- 家庭用磁石磁気治療器
- 心電図モニター
- MRI
- 消化管用のカテーテル など
また、管理医療機器の中でも、家庭用管理医療機器(家庭用電気治療器は除く)以外のものを「特定管理医療機器」と呼びます。上記のものの中では、心電図モニターやMRI,消化管用カテーテルが特定管理医療機器です。
管理医療機器は「クラスⅡ」です。
高度管理医療機器
「高度管理医療機器」とは、医療機器に故障や不備などが生じても、人体にリスクが高いものです。
管理医療機器には下記のようなものがあります。
- コンタクトレンズ
- 輸液ポンプ
- 放射線治療装置
- 人工呼吸器
- ペースメーカー
- 縫合糸(血管などを縫う糸)
- 透析機器
- AED など
高度管理医療機器は「クラスⅢ・Ⅳ」です。
特定保守管理医療機器
一般医療機器、管理医療機器、高度管理医療機器のうち、保守点検や修理などの管理に専門的な知識及び技能を必要とする医療機器のことです。
特定保守管理医療機器には下記のようなものがあります。
- MRI装置
- CT装置
- X線診断装置
- 放射線治療装置 など
管理が適正に実施されなければ疾患の診断や治療に大きな影響を与えてしまいます。特定保守管理医療機器は厚生労働大臣が指定します。
医療機器を販売・貸与するために必要な管理者の資格について
医療機器を販売したり、貸与したりする場合によって資格を持った管理者が必要です。
人体にどの程度影響を与えるかによって「一般医療機器」や「管理医療機器」、「高度管理医療機器」「特定保守管理医療機器」に分類されており、分類ごとに保健所の「届出」や「許可」、「管理者」の必要、不必要が設定されています。
医療機器の「販売業」や「貸与業」を検討している方で「保健所の届出がいるのか分からない」、「資格を有した管理者をおいたらいいか分からない」といった方は参考にしてみてください。
医療機器の販売や貸与の展望について気になる方は「医療機器製造販売業とは?その重要性や未来展望について詳しく解説」を読んでください。
一般医療機器の販売・貸与業の場合
一般医療機器の「販売業」や「貸与業」の場合、保健所への届出や許可は不要、資格を有した管理者の設置も不要です。
注意点として、「基本は一般医療機器の「販売業」や「貸与業」を行うけど、一般医療機器管理に分類される特定保守管理医療機器の利用がある場合です。
もし特定保守管理医療機器の利用がある場合は、高度管理医療機器と同等の保健所の許可と管理者が必要になります。
管理医療機器販売・貸与業の場合
管理医療機器の「販売業」や「貸与業」の場合、営業所ごとに管理者は不要です。ただし、特定管理医療機器の場合は管理者が必要になります。
さらに一般医療機器と同様に、特定保守管理医療機器の利用がある場合は、高度管理医療機器と同等の保健所の許可と管理者が必要です。
そして、管理医療機器販売・貸与業の管理者は一般医療機器の販売や貸与もできます。
高度管理医療機器等の販売・貸与業の場合
高度管理医療機器の「販売業」や「貸与業」の場合、保健所へ許可が必要、資格を有した管理者の設置は義務です。管理医療機器や一般医療機器の販売や貸与もできます。
管理者は、厚生労働大臣の登録を受けた基礎講習の修了が必要です。または、厚生労働大臣が特定の知識や経験があると認定されなければいけません。
特定保守管理医療機器の販売(貸与)について
特定医療保守管理医療機器の販売や貸与をする場合は、高度管理医療機器等販売(貸与)業の許可がいります。営業所ごとに管理者をおく必要があります。
医療機器販売業者等の管理者資格を取得する方法
ここでは医療機器販売の管理者が販売・貸与をするために必要な資格を取得する方法について紹介します。
- 医療機器区分ごとの資格の取得方法
- 資格取得に必要な実務経験
- 資格講習を受けられる機関
- 資格講習を免除される人
- 資格取得後の継続研修
資格取得を考えている管理者の方は参考にしてください。
医療機器の区分ごとの管理者資格の取得方法
医療機器の販売・貸与をする営業所の管理者は区分ごとに必要なカリキュラムを受講しなければいけません。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の施行規則により、以下の7つに分けられます。
カリキュラム | |
高度管理医療機器 (※特定保守管理医療機器含む) |
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特定管理医療機器 (※医療機関向け管理医療機器) |
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指定視力補正用レンズ等 |
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補聴器 |
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家庭用電気治療器 |
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プログラム高度管理医療機器 |
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プログラム特定管理医療機器 |
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参考:一般社団法人 保健福祉振興財団「令和5年医療機器販売・貸与管理者基礎講習 概要」
資格取得に必要な実務経験
医療機器の販売や貸与をする管理者には以下のような実務経験が必要です。
医療機器の区分 | 実務経験 | 必要な実務経験 |
高度管理医療機器等 | 3年以上 |
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特定管理医療機器 | 特定:3年以上
高度:1年以上 |
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補聴器及び家庭用電気治療器 | 1年以上 |
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補聴器 | 1年以上 |
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家庭用電気治療器 | 1年以上 |
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資格講習を受けられる機関
販売管理者の資格を取得するためには、下記の厚生労働大臣の登録を受けた機関で講習を受けなければいけません。
- (公益財団法人)医療機器センター
- (一般社団法人)日本ホームヘルス機器協会
- (公益財団法人)総合健康推進財団
- (一般財団法人)保健福祉振興財団
参考:厚生労働省「医療機器販売業者等の営業所管理者の資格要件に係る講習」
資格講習を免除される人
下記の条件を満たしている場合は、資格講習を免除されることがあります。
- 医師、歯科医師、薬剤師の資格の資格がある場合
- 第一種医療機器製造販売業の総括製造販売責任者の要件を満たす場合
- 医療機器製造業の責任技術者の要件を満たす場合(大学などで物理学、化学、生物学、工学、情報学、金属学、電気学、機械学、薬学、医学または歯学に関する専門課程を修了した人)
- 医療機器修理業の責任技術者の要件を満たす場合
- 薬種商販売業許可を受けた店舗における当該店舗に係る許可申請者(申請者が個人の場合に限る)若しくは当該店舗に拘った場合
- 財団法人医療機器センターおよび日本医科器械商工団体連合会が実施していた医療機器販売適正事業所認定制度「販売管理責任者講習」を修了した場合
販売や貸与の実務経験がなくても管理者になれます。
資格取得後の継続研修
資格取得後も講習を継続して受けることが必要です。継続研修に関しては医薬品医療機器等法施行規則第168条、第194条に規定されています。毎年受講することが義務です。厚生労働省に届出している研修機関で行われています。
まとめ
この記事では、医療機器を販売や貸与する事業所の管理者に向け、必要な医療機器の基礎知識や資格の取得方法について解説しました。
管理者には扱う医療機器によって、実務経験と講習の受講が必要です。実務経験がない人でも医師などの資格や特定の大学の学部を卒業しているなどの条件を満たしている人は管理者になれます。
今後、さらなる需要が拡大すると考えられる医療機器。事業所を設立し、医療機器の販売や貸与を考えている人はぜひ記事を参考にし、資格の取得をめざしてください。