フリーランスで働く医師のメリットとデメリット・年収は常勤医より高い?

医者のキャリア

近年、働き方の多様化に伴い、フリーランス医師の存在を耳にする機会が増えました。
しかし、まだ「普通」とは言えないフリーランス医師の働き方に多くの疑問があるでしょう。

フリーランス医師は自由な働き方と、高収入が期待できます。そんなフリーランス医師の具体的な働き方をまとめました。そして、フリーランス医師として働くうえで避けては通れない、重要な注意点も。

本記事では、みなさんが気になる年収を含むフリーランス医師のメリットとデメリット、常勤医との違いについて解説します。

早速、フリーランス医師と常勤医の年収についてみていきましょう。

フリーランス医師と常勤医の年収比較

表にある通り、フリーランス医師のほうが、常勤医よりも年収が高いことがわかります。

フリーランス医師 常勤医
想定年収1920万円

(相場の時給1万円で試算:

1日8時間×週5日×4週×12か月)

※中には時給2万円の案件も

平均年収1378.3万円

参考:民間医局 医師の平均年収ランキング【年代・診療科・地域・経営母体別】

 

 

 

フリーランスの医師について

フリーランス医師のメリットとデメリット、具体的な働き方について説明します。常勤医の特徴も解説しているので比較検討することができます。

フリーランス医師の現状と背景

まずは、フリーランス医師の医師業界での立ち位置や社会的背景についてです。

フリーランス医師とは

フリーランスの医師とは、非常勤勤務(アルバイト)をベースとする勤務形態の医師を指します。基本的に、2つ以上の病院を掛け持ちして収入を得ています。

フリーランス医師の最大の特徴は、働き方を自分で決めることができる点です。たとえば、先月はよく働いたので、今月は週三日の勤務にすることもできます。

フリーランス医師の社会的背景

2019にはじまった、政府の行う「働き方改革」により医師含む様々な業界で、働き方が柔軟になりました。今では新医師臨床研修制度によって、十分な診断能力を身に着けることができ、医局に入らない働き方が可能です。ほかに、女性医師支援策の推進で産休や、育休を機にフリーランスになる女医が増えました。

常勤医は医師にとって普通の道と言って問題ないでしょう。しかし、日本でフリーランス医師はまだ「普通」とは言えません。そのため、キャリア形成や将来設計などに関するマニュアルがないのです。そこで、医師のマネジメント力が問われます。仕事量や、体調、自発的な学習が必要です。

フリーランス医師に向いている診療科目

フリーランスに向いている診療科目と、向かない診療科目を紹介します。

フリーランス医師向きの診療科目

麻酔科

麻酔科の医師は、フリーランスに向いています。その理由は、慢性的な麻酔科医不足と麻酔医の業務形態にあります。手術件数に対して、麻酔科医が足りていないのが現状です。ゆえに、報酬が高く、求人も多くあります。そして、手術が終われば仕事は終わりです。このような1回完結型の業務形態はフリーランスに向いています。

ただし、専門医としての資格維持が困難なため、働き方に工夫が必要です。新専門医制度によって、麻酔医が資格を維持するには「同一施設で週3日以上麻酔科関連業務への専従をしていること」が条件。(引用:日本麻酔科学会

美容クリニック

美容クリニックは休診がほとんどありません。脱毛やレーザーは数回の通院になることが多いため、非常勤の医師の需要が高いです。

フリーランス医師として意識すべきことは、一人の患者にかける時間よりも回転率です。売上を意識した仕事でクリニック側からの評価と信頼を得ることが重要でしょう。

フリーランス医師に向かない診療科目

外科医

フリーランス医師として技術を活かしづらい診療科目は外科医です。なぜなら、手術だけで完結する働き方がほぼありません。外科手術は入念な事前準備が必要で、患者と家族の信頼関係も欠かすことができません。さらに、手術後は経過観察や、リハビリの処方が必要です。手術だけで呼ばれる外科医は、世界でほんの一握りのカリスマのみです。

しかし、フリーランス医師になれないわけではありません。非常勤とスポット(日雇いの医師)などの仕事を組み合わせることで安定性と収入アップをの両方を実現できるでしょう。

フリーランス医師のメリットとデメリット

次に、フリーランス医師のメリットとデメリットを検討していきます。

フリーランス医師のメリット

繰り返しになりますが、フリーランス医師の最大のメリットは自由な働き方が可能な点です。医師の目的に合わせて柔軟に働くことができます。ワークライフバランス重視、スキルアップ、高収入を得たい、人間関係のしがらみを避けたい等の要望をかなえることが可能です。

ワークライフバランス

フリーランス医師は、勤務時間や曜日を自分で好きに決めることができます。例えば、半日勤務や、週3日の勤務が可能です。労働時間が少なく、残業もほぼありません。子育て、介護はもちろん、趣味や健康重視の医師にも向いています。

スキルアップ

また、スキルアップのためにフリーランスになる医師もいます。フリーランス医師は仕事内容を自分で選ぶことができるので、症例数や手術数を多くこなすことが可能です。そして、非常勤を通してクリニック経営を学ぶこともできます。

高収入

冒頭の表にあるように、フリーランス医師は常勤医よりも収入が高いケースが多いです。生活水準を上げたい医師や、クリニックの開業資金を貯めたい医師にも推奨できます。

人間関係

フリーランスの医師になることで、人間関係のしがらみから解放されることができます。常勤医の中には、上司医師や、経営者ともめることや、上下関係にストレスを感じる医師も多いようです。

フリーランス医師のデメリット

メリットの多いフリーランス医師には、デメリットも存在します。代表的なものは、仕事の継続的な獲得と収入における不安定さでしょう。フリーランスの医師は、単発や短期間の仕事が多く、常勤医が多い職場だとクビになる可能性をはらんでいます。その際、複数の仕事を受け持つことでリスクを減らすことが可能です。

それでは、ほかのデメリットについても解説します。

福利厚生が少ない

フリーランス医師は、税務上の区分として個人事業主です。そのため、国民年金加入することが義務づけられます。国民年金の保険料は定額なので、収入に応じて年金額が上がることはないでしょう。国民年金の受給額は加入年数によって計算されます。そして、確定申告が必須であり、事務作業が伴います。ほとんどの医師は税理士に頼っている状況です。

専門医の資格維持が困難

フリーランスの勤務形態では、専門医の資格維持が困難になる場合があります。例えば、新専門医制度によると、麻酔医の資格維持のために「同一施設で週3日以上 麻酔科関連業務への専従をしていること」が必要です。(引用:日本麻酔科学会

学びの機会が少ない

フリーランス医師は、学会参加の費用が自腹になり、最新技術を学ぶ機会が減ります。そして常勤医の中に、フリーランス医師をよく思わない人もいます。そのような環境で新技術を教わることはできないでしょう。仕事量を調節して、学会に参加するスケジュールを立てましょう。

医療ミスのリスク

フリーランス医師として働く場合、医療ミスをしたとき、病院は守ってくれません。むしろ裁判の際に、病院は家族側につくのでほとんど勝てる見込みがありません。医療ミスの責任の重さには、特に注意が必要です。

通勤ストレス

フリーランスで働く医師にとって、思いのほか負担になるのが通勤ストレスです。複数の勤務先で働き、短期間で職場が変わることが多いため、通勤経路の変更が多いです。遠くの病院に出向く場合も多いでしょう。そのたびに、ホテルを転々とすることも珍しくありません。環境の変化が苦手な医師は注意が必要です。

現役で働くフリーランス医師の声

フリーランス医師は、メリットとデメリットの両方があります。ここで、実際に常勤医からフリーランスに転向した現役医師「おると」さんの例を見ていきましょう。フリーランス医師になった動機や、家族等の周囲の反応。そして、具体的な勤務スケジュールやフリーランスに必要な能力について紹介します。

「整形外科医おると」

おるとさんは現在、フリーランスで働く整形外科医です。フリーランス医師の普及を目指し、Twitterのフォロワーを半年で1万5千人まで増やした実績があります。クリニック開業を目指して、数年常勤医で勤務したのちフリーランスに転向。

フリーランス医師に転向した当初

おるとさんは手術、病棟での経験とクリニック開設・運営に必要なことが食い違いフリーランスになりました。家族や同僚などの周囲は反対していたそうです。おるとさんは医師の家系ですが、親世代の医師はフリーランスの存在自体知らないとのこと。

働き方

おるとさんは、現在5つの病院に勤務しています。仕事を受ける方法は医師求人会社や自分のツテ、知人の紹介などからです。

常勤医からフリーランスの医師になってよかったことは、休みが増えたこと。常勤医だったころ、月2・3日の休みのみ。しかし、フリーランスになった今は、週一で休みをとることができ、残業もほとんどありません。

おるとさんは、フリーランスになった今、仕事にやりがいを感じています。クリニック開業という目的のために仕事を選ぶことができ、毎日の密度が濃いです。

フリーランス医師に必要なこと

フリーランス医師に必要な能力は、職場のスタッフや患者とのコミュニケーションと社会人マナーです。ほかのフリーランスの仕事にも共通することでしょう。

Twitterで情報収集

おるとさんが、フリーランスになって特に大事にしていることは、情報収集です。まだ、一般的とは言えない、フリーランス医師の貴重な情報元として、Twitterを使っています。フリーランス医師同士で、病院とのもめごとなどの問題や悩み、そしてその際の対応の相談、解決した経験の情報共有をしています。さらに、Twitterを通して仕事につながることも。

参考:https://biz.moneyforward.com/blog/38212/ (記事の更新日2021.12.21)6/17

フリーランス医師の働き方

フリーランス医師の働き方は代表的なものが3種類あります。

1つずつ見ていきましょう。

定期非常勤

曜日を固定し勤務する、中長期の勤務形態です。例えば、週3回は勤務日固定で、1年は継続して出勤しなければなりません。期間は、半年から3.4年単位です。

子育てや介護などのため、自由時間の確保したい医師が主に採用する働き方です。限られた曜日のみなので、安定した収入を得るためには、複数の病院勤務の掛け持ちをする必要があります。

一方で、大学病院側、医療機関の観点からみても、専門性の高い医師を週に数回非常勤医師として確保する利点は大きいです。例えば、専門外来や、患者相談会、夜間当直を任せることができます。フリーランス医師と雇う側の医療機関の双方に利点があります。

スポット

スポットは、日雇いのアルバイトと考えて問題ありません。1日〇時間いくらのような形態です。定期非常勤、常勤医と比べ、収入が高いです。

学会参加のための欠席や、休暇をする医師のカバーをするために募集するため、突発的な求人が多いです。したがって、希望日に入れないことがあり、安定性に欠ける面があります。しかし、いまでは豊富な求人サイトがあるので、スポットのみの勤務も理論上は可能です。

ただし、スポットの求人が求めるのは即戦力です。経験と専門医の資格が必要な場合も多いでしょう。卒後5年以上が最低条件

定期非常勤×スポット

非常勤で働きつつ、間にスポットの仕事を受ける働き方もあります。自由時間を確保しつつ、症例の経験を積めるのがメリットです。

臨床以外の仕事

臨床以外ではたらく医師は医師全体の2.9%です。

(参考:医師・歯科医師・薬剤師統計(平成30年度) 厚生労働省平成 30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/dl/gaikyo.pdf

意外な数字ではないでしょうか。臨床以外にも医師に一定の需要があることがわかります。具体的に、医師監督のもと商品開発や記事作成などがあります。

常勤医について

「常勤医師」の定義は「原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者」(病院で定めた医師の1週間の勤務時間が32時間の場合は、32時間以上勤務している医師)です。「引用:厚生労働省医政局『医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱』」

そんな常勤医のメリットとデメリットを説明します。

常勤で働く医師のメリットとデメリット

常勤医のメリットデメリットについて紹介します。

常勤医のメリット

社会保障の充実

フリーランス医師の場合、定額の国民年金です。しかし、常勤医の場合、厚生年金・社会保険の金額は収入に応じて金額が上がります。基本給の高さから金額は期待できるでしょう。退職金もほとんどの場合もらうことができます。

雇用関係の安定

常勤医は、一つの雇用先で安心してキャリアアップを目指すことができるのが強みです。安定した症例数、手術件数をこなすことができるため、着実に医師としてのスキルを上げられます。また、収入の安定性があるので、ライフプランを立てやすいでしょう。

学びと支援

常勤医は、専門医の資格の維持が容易です。麻酔医のように、同じ施設で週3日以上麻酔科関連業務への専従を必要とする資格維持も難なくクリアできます。

そして、先進医療や最新の医療機器を利用できる点も大学病院のような規模の大きな医療機関ならではの特権でしょう。結核や、感染症医療のように、民間がかかわることがすくない医療を診ることができます。

ほかに、救急医療、小児科、産婦人科は民間病院では不採算部門になりやすいです。しかし、大学病院、公立病院では不可欠なため、多くの学びを得ることができます。

常勤医のデメリット

多忙な通常業務

常勤医の大きなデメリットは、非常に多忙なです。勤務時間の延長や、緊急事態に備えてオンコールを担当しなければなりません。

キャリアアップは狭き門

医師として出世するには、同僚との競争に勝ち、少ない席数を獲得する必要があります。そのため、40台前後の医師は先行き不安のため、民間病院への転職、開業を検討することが多いです。そのとき、民間での勤務経験のない、もしくは少ない医師が、先進医療施設のない古い病院に不安を持つこともあります。

まとめ

フリーランス医師のメリットとデメリット、常勤医との違いについて説明しました。フリーランス医師についての疑問が解消され、イメージがより具体的になったのではないでしょうか。フリーランス医師にこだわる必要はなく、ご自分のライフスタイルや、目的に合わせた働き方を選択いただければ幸いです。

もし少しでもフリーランス医師に興味があれば、求人サイトで実際の仕事をみてみてはどうでしょう。おすすめの求人サイトはこちら↓

医師バイト検索サイトを徹底分析【医師におすすめのバイトもご紹介】

関連記事