電子カルテの代行入力はできる?違法にならない職種や注意点について徹底解説!

電子カルテ

電子カルテの代行入力は違法ではない

「電子カルテを代行して入力することは違法にならないの?」
「医師の記録やオーダーの入力を行うことができる職種は?」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

電子カルテに限らず、紙カルテにおいても、入力や記載の作業は、医師にとってストレスとなる作業の1つです。医師のカルテに記載する内容は、サマリーや診断書、処方、入院診療計画書など、多岐にわたります。電子カルテの入力のような事務的な作業を代行してもらうことができれば、医師のストレスを減らすことができます。さらに、医師は患者と関わる時間も増やすことができ医療の質も向上させることができるでしょう。

そこで今回の記事では、医師とって大きな負荷となっている電子カルテの入力業務の代行について、詳細に解説します。

さらに、電子カルテの入力を代行するメリットやデメリットについても説明します。電子カルテの代行入力をしてもらいたいと考えている方は、ご参考いただければ幸いです。

電子カルテの入力を代行するのは違法?

電子カルテの代行入力は違法?

電子カルテ、紙カルテ問わず、診療記録やオーダーの入力を代行することは、違法ではありません。ただし、誰でも行えるというわけではありません。医療機関で働くスタッフの中で、診療記録の記載やオーダーの登録をできるのは、医師事務作業補助者だけです。(参照:日本医師事務作業補助者協会)多忙な医師にとって、カルテの入力作業を減らすことができれば、患者と向き合うという医師本来の業務の時間を増やすことができるでしょう。そのため、医師が業務量を減らすためには、電子カルテの入力業務をシフトすることは必要でしょう。

医師記録を代行入力しても違法にならない職種

医師の業務の一部を代行できるのは、厚生労働省が定めた研修を受講した医師事務作業補助者だけです。2000年頃より医師の過労が問題視される中、「医師の事務作業の負担軽減」の取り組みとして始まった業務です。はじめは「診断書の代行作成」などの事務作業から広まり、2008年に「医師事務作業補助者」という職種が正式に誕生しました。医師事務作業補助者の活躍は、2024年に施行される医師の働き方改革の促進に向け、注目されています

看護師でも医師の記録は入力できない

医師の診療の補助など、医師とともに医療行為を行う看護師でも、診療記録の記載やオーダーを出す作業などはできません。しかし、「医師事務作業補助者研修」を受講し、訓練を修了すれば、医療従事者でなくても医師記録の記載などを行うことはできます。
看護師であれは教育を詳しく行わなくても、医師の業務や医療に関する専門用語を理解しています。そのため、電子カルテの入力にスムーズに対応することができるでしょう。
しかし、看護師が医師の仕事を担うことは、難しい現実もあります。看護師も業務の負担が多いことが問題視されている職種です。それゆえ、研修を受け、代行入力できる看護師に医師記録の入力を行ってもらうには、看護業務の負担も考慮する必要があるでしょう。

電子カルテへの代行入力で気をつけること

代行入力された内容に誤った記載や入力ミスがないかを、医師は確認する必要があります。医師記録の作成や入力は、医師の指示に基づいて行われるものです。つまり、入力内容の監修の責任は、医師にあります。つまり、入力内容の監修の責任は、医師にあります。
医師事務作業補助者が代わりに作成できる文書には、診断書や処方せんといった患者の治療に大きく関わるものも少なくありません。それゆえ、入力ミスにより、重大な問題に発展することもあります。
医師の代わりに電子カルテに登録された内容は、依頼した医師に責任があるため、入力内容をしっかり確認してから保存を行いましょう。

電子カルテへの代行入力のメリット

電子カルテの代行入力のメリット

医師事務作業補助者を配置し、医師の業務を一部代行することは、以下のメリットがあります。

  • 医師にとって負担となる業務を減らすことができる
  • 待ち時間の減少で患者サービスを向上できる
  • 医業に専念することができる
  • 医師事務作業補助体制加算がある

医師の事務作業の負担を減らすだけでなく、患者サービスの向上にもつながります。医師の仕事は、患者の診療だけでなく、事務的な作業も多くあります。そのため、カルテの記載する作業を減らすことは、医師にとって大きなメリットとなるでしょう。

医師にとって負担となる業務を減らす

本来ならば医師にしかできない業務をシフトすることで、忙しい医師の業務の負担を軽減することができます。医師の業務は患者の診療以外に、診断書や処置に関する同意書の作成、入院診療計画書の記入、入退院のサマリーの作成などがあります。患者と関わっている時間以外に、医師はパソコンに向かって作業している時間も多く、多忙を極めます。そのため、電子カルテの入力業務を減らすことができれば、医師の負担を減少されることにつながります。

そして、医師の業務の負担を減らすには、電子カルテの入力業務を減らすだけではありません。電子カルテ自体を使いこなすことで、さらに医師の業務量の軽減を期待できます。電子カルテを使いこなしたいと考えている方は「電子カルテは難しい?便利な使い方や使いこなすためのヒントを紹介」もぜひ読んでみてください。

待ち時間の減少で患者サービスを向上

医師の診療と同時に、処方せんや紹介状の返信に関する書類を代わりに作成してもらうことで、患者の待ち時間を減らすことができます。医師事務作業補助者は、医師が診察している隣で、医師の指示を聞き、診療の内容をリアルタイムにカルテに入力することができます。薬の処方や次回の予約なども入力することができるため、診察後の患者の待ち時間を減らすことが可能になります。その結果、患者1人にかかる時間を減らすことができ、診療する患者の数も増やすことができるでしょう。
病院での待ち時間は、体調が悪い患者にとって、かなり負担になることです受付や会計時の患者の待ち時間を短縮し、患者サービスを向上させるためにも、治療や処置など、医師にしかできない業務以外は、医師事務作業補助者に行なってもらうことが望ましいでしょう。

医業に専念できる

医師以外でもできる作業を医師事務作業補助者に依頼することができれば、医師は医師にしかできない業務、つまり医業に専念することができます。医師にしかできない仕事は、患者の診察や治療に関することです。電子カルテの入力に追われては、医業に集中することが難しくなります。また、パソコンばかり見ている医師は、患者からの印象もよくありません。医師は患者としっかり向き合い、診療することが望まれます。
医師が電子カルテを入力する時間を減らすこことができれば、患者とコミュニケーションをとる時間が増えます。患者と接する時間が増えると、医療の質もあがるでしょう。

医師事務作業補助体制加算がある

一定の基準を満たすことができれば、医師事務作業補助者の配置に「医師事務作業補助体制加算」をとることができます。医師事務作業補助者の配置による加算は、2008年の診療報酬の改定で、策定されました。これにより、医師の負担の軽減および処遇の改善を図るため、医師事務作業補助者の人件費を、国から補助してもらえます。
補助を受けることができれば、さらに医師事務作業補助者の採用を積極的に行うきっかけになることでしょう。

電子カルテへの代行入力のデメリット

電子カルテの代行入力のデメリット

医師以外が処方せんやオーダーの登録、診療記録の記載をすることは、良い点ばかりではなく、デメリットになることもあります。デメリットとなる点は、医療トラブルにつながることもあるため、気をつけましょう。

意図する文章が書けていない

電子カルテに医師が意図する内容を、正確に代行入力するためには、知識やスキル、経験が必要となります。電子カルテに記載することは、医師の指示のもと行うとはいえ、入力に慣れていない医師事務作業補助者が、医師の意図するとおりに入力できるというものではありません。医師事務作業補助者は、患者と医師の会話をきちんと理解し、診療の内容を正確に文書まとめなければいけません。そのため、医師事務作業補助者は、専門用語の多い医師の指示を理解するために、知識やスキル、経験を必要とします。

医師が意図する内容をカルテに入力するためには、医療に関する知識を少なくとも身につけておく必要があります。医師事務作業補助者の研修は厚生労働省の指定のものではあるが、全国で統一した学習カリキュラムがないため、医師事務作業補助者のスキルや知識に個人差が生じます。さらに、診療科目ごとの基礎知識や業務の中で使われる専門用語は、現場で身につけなければいけません。

代行入力の内容の責任者は医師

電子カルテに入力された記載は、医師事務作業補助者ではなく、医師に責任の所在があります。前述したように、電子カルテの代行入力は医師の指示に基づいておこなわれるものです。
万が一、情報が正確に入力されず、その記載がもとになって、大きなミスにつながる可能性もあります。そのようなことがないように、医師は記載された内容の確認を行うことは、必要不可欠です。

電子カルテを代行入力できる医師事務作業補助者とは?

電子カルテの代行入力は医師事務作業補助者

医師の働き方改革も叫ばれる昨今、医師事務作業補助者の活躍が期待されます。医師事務作業補助者は、「医師の業務量を減らし、医療の質の向上」を目的に新しく設けられ職種です。医療スタッフとしての経験がない方でも、医師事務作業補助者になることができます。

指定の研修を受講する

医師事務作業補助者として医療機関で働くには、厚生労働省が指定する研修を受講しなければいけません。研修は32時間以上あり、研修受講後に修了証書が発行されます。そして、その後6カ月間の職場研修を受けます。医療機関への採用の時点で研修を受けていなくても、採用後に研修を受けることができます。
以下は、32時間の研修のカリキュラムです。

  • 医師法や医療法、医薬品医療機器等法、医療保障制度などの医療関連法規の概要
  • 個人情報保護について
  • 一般的な医療内容や用語について
  • 診療記録の管理や代行入力など
  • 電子カルテやオーダリングシステムについて

研修が必要な医師事務作業補助者ですが、「日本医師会認定医療秘書資格取得者」は研修は受講せず、医療機関の訓練だけでよいです。

医師事務作業補助者が行える業務

医師事務作業補助者が行うことができる業務は多岐にわたります。2022年の改定で、業務内容が明確になっています。
以下は、医師事務作業補助者がおこなえる主な業務内容です。

  • 診断書などの医療文書の作成
  • カルテの代行入力
  • 会議の準備や手術症例の登録などの、医療の質の向上に関する事務作業
  • 厚生労働省などに報告する診療データの整理

それぞれの業務に関して解説していきます。

医療文書の作成

診断書や紹介状、紹介状の返信、処方せんなどの医療関連の文書の作成を代行します。そのほか、患者さんへの入院の案内や検査、診療の日程調整なども行います。

カルテの代行入力

診察室に入り、医師と患者の診療に立ち合います。そして、電子カルテの入力を代行します。医師は患者の診療中に、検査の予約や処方せんのオーダーを診療と同時に、電子カルテに登録してもらえるため、医師は業務を効率的に行うことができます。

会議の準備や手術症例の登録

院内や院外の会議の資料作成、学会や研修会のための資料づくりも医師事務作業補助者が行うことができる仕事です。また、オペ件数の登録作業、院内がんの登録なども行います。

厚生労働省などに報告する診療データの整理

診療に関するデータの集計作業や管理も医師事務作業補助者がおこなえる業務です。公的機関が管轄する
救急医療情報医システムへの入力や感染症サーベイランス事業に係る入力も行うことがあります。

医療の質を向上させるための電子カルテ代行入力

医療の質を向上させる電子カルテの代行入力

2024年の医師の働き方改革の実現には、医師の業務のタスクシフトが課題です。そのため、医師事務作業補助者が活躍することで、医師の業務負担を大幅に減らすことが可能になり、医療の質の向上を促進させることができます。

とくに、開業医は「開業医の1日のスケジュール・診療から経営業務まで徹底解説!」の記事に書いているように、診療業務以外にも経営に関する業務などもあり、多忙を極めます。クリニックでも医師の負担を減らし、業務の効率を図るためにも、医師事務作業補助者の導入を考えることもよいかもしれません。

医師事務作業補助者を配置をする

医師事務作業補助者の配置を検討する場合、必ずしも新しく人材を採用する必要はありません。医療機関によっては、医師の業務負担を減らす目的とはいえ、スタッフを増やすことが経営上、できない場合もあるでしょう。
新しく採用するだけでなく、既存のスタッフに研修へ行ってもらうことで、医師事務作業補助者を配置することができます。

医師事務作業補助者が行えない業務

医師事務作業補助の業務範囲を超えると、違法になることもあるので、業務内容を知っておく必要があります。
医師事務作業補助者は、医師のそばで仕事することが多いため、できる限り業務をシフトしたいと思うかもしれません。しかし、法律上、行えない業務があるので、業務を指示する際には注意が必要です。
医師事務作業補助者が行えない業務は、以下のことです。

  • 医師以外から依頼された業務
  • 受付や会計の業務
  • 診療報酬を請求する業務
  • 医療機関の経営に関わる業務
  • 看護師が行う業務の補助 など

行うことができる業務、できない業務が何なのか、マニュアル等がないと、迷うこともあるでしょう。そのため、業務範囲を明文化し、他のスタッフも同じ認識を持てるようにしておくことがよいかもしれません。

医師事務作業補助者に必要な教育

医師事務作業補助者を配置した際には、まずは教育的に関わっていく必要があります。まったく医療現場で勤務したことがない方は、電子カルテで使われる用語が分かりません。医師事務作業補助者は多岐にわたる専門的な業務を行う必要があり、すぐに必要なスキルを身につけることは難しいでしょう。
例えば「腹部X線検査」の予約の入力を指示するために「お腹のレントゲンのオーダーを入れて」と言っても、腹部X検査とお腹のレントゲンが同じ検査ということを理解できない可能性があります。看護師など医療従事者であれば、腹部X検査を「レントゲン」「お腹の写真」といった用語を使っても意味が同じであると分かります。

医療に携わった経験のない方は、自分が理解している用語を使って指示をもらわないと、戸惑ってしまいます。そのため、医療機関で働いたことがない方を配置する場合は、教育係をつけるなどして、教えていくこともよいでしょう。そして、医療用語や勤める病院の業務などについてしっかり理解できるよう、丁寧に詳しく教えていきましょう。

まとめ

電子カルテの代行入力は違法?

本記事では、電子カルテの代行入力を行える職種や代行入力のメリット・デメリット、そして注意点について解説しました。また、医師事務作業補助者を配置する際に気をつける点についても説明しています。

電子カルテの代行入力は、医師事務作業補助者だけが行うことができます。医師の本来の仕事は、患者の診療や処置ですが、診療以外の文書やカルテの入力といった事務的な作業も多くあり、かなり多忙な業務をこなしています。医師が病気の治療に集中できなければ、患者は満足する医療を受けることができないでしょう。そのため、医師事務作業補助者が電子カルテの入力を行うことで、医師の業務の負担を減らすことができ、診療の時間を増やすことができます。その結果、医療の質の向上につながります。

医師事務作業補助者による電子カルテの代行入力が、2024年の医師の働き方改革の実現のための一助となり、さらなる医療の質の向上となることを期待します。

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