医師は他の職業と比べると収入も高く、税金も多く発生してしまいます。
節税対策とはいっても、どんなことをすれば良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。
今回は、国で認められている節税対策をご紹介します。
勤務医と開業医でかかる税金は違う
勤務医と開業医では、同じ金額でもそれぞれが支払う税金は違います。
なぜなら勤務医はサラリーマン、開業医は事業者に該当するからです。
事業者はサラリーマンより発生する税金の種類も多いです。
では、どう違うのでしょうか。
- 勤務医
- 開業医
それぞれ詳しく説明していきます。
勤務医
まずはサラリーマンの立場である勤務医。
支払う税金は給与から天引きされています。
詳しく見ていくと、所得により金額の変わる所得税。
そしてお住まいの地域に支払う住民税です。
開業医
開業医の場合、個人事業主としてなのか法人としてなのかにより発生する税金が変わります。
法人の場合ですと、法人税・法人住民税・特別法人事業税・消費税及び地方消費税です。
個人事業主には所得税・復興特別所得税・住民税・個人事業税・消費税及び地方消費税がかかります。
自動車税や固定資産税は、対象物を所有していれば対象者となるでしょう。
医師が節税対策をするメリット
医師は収入が増えて高所得者になると支払う税金が増えていきます。
そこで、節税対策をするだけで納税する金額が大きく変わるかもしれません。
高所得の医師が節税対策をするメリットは大きく分けて3つあります。
- 節税効果が期待できる
- 経費の計上が認められる
- 節税だけでなく資産形成できる
それでは、ご紹介していきます。
節税効果が期待できる
節税効果が期待できるのは、医師が高額所得者だからです。
収入が上がり、高額所得者になればなるほど累進課税は大きくなってしまいます。
節税対策をすることで、少しでも税金による負担が重くなるのを避けられるかもしれません。
経費の計上が認められる
実は、勤務医でも経費の計上が認められます。
経費というものは事業者のみ対象かと思われるかもしれません。
しかし、医師の場合は学会の参加のための旅費や医学書の購入など、職業上さまざまな出費があります。
確定申告をすることにより、勤務医でもそのような費用を経費として計上することが可能となるのです。
開業医の場合は、事業の中で必要な支払いは経費として計上します。
事業者の所得金額は、収入から経費を差し引いたものとなるのです。
必要な経費であることの証拠として領収書やレシートは必須となるので、忘れずに保管しておきましょう。
節税だけでなく資産形成もできる
「資産形成」とは、資産を構築していくこと。
将来必要となるであろうお金を、1から増やしていくことです。
「資産形成なんて難しくてできないんじゃないか?」と思うかもしれません。
しかし、ほかの職業の人より収入の高い医師だからこそ簡単にできる資産形成も存在します。
現役のうちに資産を形成することは、老後に安定した生活を送るのに最適と言えるでしょう。
今からでもできる医師の節税対策13選
「節税対策なんて自分には関係ないだろう」「自分ができる節税対策なんて無いだろう」と思うかもしれません。
しかし、今からでも医師が自分でできる関税対策は多くあります。
13種類の節税対策を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 住宅ローン控除
- 特定支出控除
- 会社設立(プライベートカンパニー)
- 不動産投資
- 個人事業主になる
それでは、ひとつずつどのような控除なのかを解説していきます。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除とは、配偶者がいる人が受けられる控除です。
「民法上の配偶者」、「納税する方と生計を共にしている配偶者」、「年間合計所得が48万円以下(給与のみの方では給与収入103万円以下)の配偶者」、「青色申告者の専従事業者としてその年に給与の支払いを受けていない、または白色申告者の専従事業者でない配偶者」が対象です。
48万円以上133万円以下となると、「配偶者特別控除」の対象となります。
配偶者控除の金額は、所得額や年齢によって異なるので、確定額はありません。
扶養控除
扶養控除と言えば子どもが対象という印象ですよね。
しかし、両親など親族も養っている場合は、一定の条件を満たせば扶養控除の対象となります。
扶養控除は勤め先の年末調整または確定申告で適用されます。
対象条件は配偶者控除とあまり変わりません。
しかし、「年齢が16歳以上」「配偶者以外の親族、または里子や市町村から養護を委託された老人であること」が条件となっています。
しかし残念なのが16歳未満が扶養控除対象ではないこと。
2011年までは16歳未満も控除対象でしたが、子ども手当(児童手当)ができたことにより廃止となりました。
扶養控除額の金額は区分によって定められています。
ただ、注意すべき点としては同居老親等は老人ホームに入居している場合は対象外です。
扶養控除にも対象者の条件が決められているので、しっかり確認しましょう。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、自分自身の社会保険料を納めた際に受けられる控除のことを指します。
配偶者・そのほか親族の社会保険料を納めた時にも受けることが可能です。
社会保険料の対象はその年の1月1日から12月31日までに納付した保険料の全額となり、住民税や所得税が安くなります。
しかし、会社で社会保険に入っていない・国民年金や国民健康保険に加入している人は対象外となります。
年度の途中で転職前に国民年金保険料や国民健康保険料を払っていた期間がある人も対象にはなりません。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、納税者が保険料を支払うと一定の金額が課税所得から差し引かれる金額です。
この控除により、住民税や所得税が軽減されます。
生命保険には「一般生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」の3つがあります。
保険料控除証明書は毎年10~11月に送付されるので、契約している人は必ず確認しましょう。
控除額に関してはそれぞれ条件があり、上限額も設定されています。
地震保険料控除
1年間に支払った地震保険料のうち、一定額を控除できるのが地震保険料控除です。
地震保険料控除は、住民税の場合は最大2万5,000円、所得税の場合は最大5万円を控除を受けることが可能になります。
保険会社から送られてくる地震保険料控除証明書は生命保険同様10~11月なので、こちらに関しても契約している人は忘れずに確認しましょう。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、近年注目されつつある控除です。
対象となる共済制度の掛金を支払うと、共済額すべてが所得控除になります。
大きく分けると4種類。
「小規模企業共済制度」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」「企業型確定拠出年金(企業型DC)」「心身障害者扶養共済制度」があります。
「小規模企業共済制度」は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主のための積み立て退職金です。
サラリーマンの方はあまり耳にしたことがなかったり、馴染みがないかもしれません。
「個人型確定拠出年金(iDeCo)」はここ数年で有名な制度と言えるでしょう。
国からも進められている制度であり、テレビでも何回も紹介されているので知名度は高いのではないでしょうか。
「企業型確定拠出年金(企業型DC)」の場合は個人ではなく企業が毎月積み立てしてくれます。
運用自体は従業員が行うものです。
「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と「企業型確定拠出年金(企業型DC)」は個人が行うのか企業が行うかの違いだけで、仕組みは変わりません。
そして60歳までは引き出しは不可能です。
サラリーマンが資産形成する第一歩として推奨されています。
「心身障害者扶養共済制度」は、心身障害者を扶養する保護者に万が一のことがあった場合のための共済制度です。
すべて控除対象になり、資産も形成できるので注目度が高い制度と言えるでしょう。
医療費控除
医療従事者であれば、医療費控除のことはご存じかもしれません。
医療費控除は、自分もしくは扶養する家族の医療費が年間で一定額以上になった場合に、自身で申請手続きができる控除です。
その金額に応じて自分の所得税が控除されるので、支払っている医療費が高額の人にとってはありがたい制度ですね。
具体的に申請できるものとして、妊婦の通院や出産費、病院での診察代・薬局での薬代、松葉杖などの医療機器の費用やリハビリ代、通院のための交通費があります。
交通費に関しては自家用車のガソリン代などは含まれませんので、申請していいものか分からないものはしっかり確認しましょう。
また、病気やけがの治療に関しての支払いが対象です。
美容や予防のためにかかった費用は対象外となりますので注意してください。
控除額に関しては、世帯の医療費が10万円を超えると対象となる可能性があります。
また世帯によっても金額が変わりますので、病院や薬局の領収書は保存しておきましょう。
寄付金控除
寄付金控除と言えば「ふるさと納税」が有名です。
他にも、対象の団体へ寄付をした場合は控除の対象となります。
また、決まった条件が当てはまった場合に関しては寄付金控除ではなく寄付金特別控除を受けることが可能です。
寄付金控除とは所得控除のことであり、寄付金特別控除とは税額控除のことです。
簡単に言うと、所得控除は高所得者に減税効果があると言われています。
税額控除は少額の寄付でも減税効果を得やすいとのこと。
寄付金特別控除を受けたい場合は、公益社団法人、認定NPO法人、政党などが対象です。
その際の控除額も計算方法があり、それぞれ異なります。
ふるさと納税も含め、寄付金特別控除を利用したいのなら確定申告を忘れずに行いましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、マイホームを購入した際に受けることができる控除制度です。
現在では「住宅ローン控除」「住宅ローン減税」などと言われていますが、正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。
控除できる期間はマイホームを購入してから10年間です。
また、控除を受けるにはいくつかの条件もあり、それらをクリアしなければ対象となりません。
マイホーム購入後、初年度は自身で確定申告をしなければいけませんが次年度以降は勤務医であれば年末調整で手続きができます。
気になる控除額ですが、住宅の性能や適用される年、所得によって様々です。
マイホーム購入は大きな買い物なので控除対象になるのはありがたいですよね。
しかし、提出書類に不備があったりした場合はちゃんと控除が受けられないので、申告の際には確認を怠らないようにしましょう。
特定支出控除
医師は、学会や出張、仕事をする上で必要な書籍を購入するなど支出の多い仕事です。
特定支出控除は、学会であったり資格取得の際にかかった金額を経費として計上することが可能となります。
開業医の場合は自身の会社の経費としてまとめて申告が可能ですが、勤務医はそうではありません。
会社で学会の旅費を出してくれない場合もあるので、そういったときに特定支出控除が申告できます。
申請する際には、勤務先の証明がなければ申告できませんので注意しましょう。
会社設立(プライベートカンパニー)
勤務先から副業を認められているなら会社設立をしてしまった方が良いでしょう。
医師は収入の高い職業です。
副業で多くの収入を得られているのであれば会社を設立したほうが節税に繋がります。
会社を設立してしまえば、必要経費として認められる範囲が広くなり、法人用保険の利用も可能です。
また、所得を分散させるために家族を従業員や役員にしてしまえば節税できます。
しかし、副業での収入がそこまで多くないのであれば会社設立はおすすめしません。
会社を設立・運営することはコストがかかります。
副業での収入が少ない場合だと逆に損をしてしまうので注意しましょう。
不動産投資
医師が不動産投資をすることによって「所得税・住民税の節税」「副業として、資産形成もできる」「融資が通りやすい」などのプラス効果があります。
賃貸のアパートやマンションを購入し、家賃収入を得ながら必要経費を計上することが可能です。
ほかにも、物件を安く購入し高値で売却することにより利益を得るなんていう方法もあります。
入居者がいれば収入は安定し、自分自身にもしものことがあっても不動産収入で家族を守ることもできるでしょう。
しかし不動産投資は、賃貸物件の場合だと空室の状態が長くなるほど維持費のみがかかり必ず節税対策につながるとは言えません。
物件購入の際は慎重に進めていくことをおすすめします。
個人事業主になる
医師がスモールビジネスとして個人事業主となるケースは少なくありません。
会社設立も節税対策としてベストな方法です。
しかし、会社を設立するのには30万ほどかかると言われています。
初期費用がかからずに小さいな利益から少しずつ進めていく。
多くの開業医は個人事業主としてスタートする場合が多いのではないでしょうか。
勤務医をしている職場以外で、副業での収入が600万ほどの利益があれば個人事業主で十分です。
しかし、1,000万以上の利益になると個人事業主よりは会社設立の方が節税できるので、自分の副収入がどれくらいなのかをしっかり把握しておくのが良いでしょう。
まとめ
今回は医師が節税対策をするメリットや、今からでもできる節税方法を13個に分けてご紹介しました。
医師は収入の高い職業なので発生する税金も高額となってしまいます。
しかし基本的な控除や、医師だからこそできる対策をしっかり行うことができれば大きな節税効果が期待できるでしょう。
「自分一人では不安」という人には医師の節税対策のエキスパートもいるので、そういった機関に相談してみるのもいいかもしれません。
自分ができる方法で少しずつ節税対策に取り組んでみてください。