業務を効率化したいなどの目的で電子カルテの導入を考えている方にとって、気になるのが導入費用。「費用を抑えて導入したい」「導入費用について詳しく知りたい」と考えている方は多いでしょう。
厚生労働省の推進もあり、電子カルテを導入している医療機関は年々増えてきています。しかし、費用がネックとなり導入をためらっている医療機関も少なくありません。
そこで、今回の記事では電子カルテの導入費用の相場や導入で受けられる補助金制度、費用を左右するポイントなどについて解説します。最後まで読むことで、電子カルテの導入費用を抑える方法が分かります。電子カルテの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
電子カルテの導入費用の相場とは?
導入費用は電子カルテのシステムによって、異なります。
電子カルテのシステムは以下の2種類です。
- クラウド型
- オンプレミス型
電子カルテを安く導入できるのは、クラウド型です。ただし、オンプレミス型の方が優れている面があります。
それぞれの特徴と導入の相場を知り、メーカー選びをおこないましょう。
クラウド型の導入相場
クラウド型の相場は以下のとおりです。
初期費用 | 10万円〜数十万円 |
その他の費用 | 月額1〜数万円 |
クラウド型電子カルテの初期費用は安いですが、月額料金が発生することが一般的です。月額料金は医療機関の規模によっても異なります。クラウド型は、オンプレミス型より導入費用が抑えられるでしょう。しかし、セキュリティ面はオンプレミス型に比べ劣るので配慮しておきましょう。
オンプレミス型の導入相場
オンプレミス型の相場は以下のとおりです。
初期費用 | 300万円〜500万円 |
その他の費用 | 2万円〜5万円 |
オンプレミス型はクラウド型に比べ、高い導入費用がかかります。サーバーなどを購入し、設置しなければいけないからです。システムに関する月額料金は必要ないため、長期的にみるとクラウド型より安くすむこともあります。
初期費用は高いですがセキュリティ面が優れているのは、オンプレミス型になります。情報の扱いを厳重にしなければいけない電子カルテ。セキュリティ面は、導入を考える際に抑えておきたいポイントのひとつです。
電子カルテの導入費用を抑える方法3選
導入費用を抑える方法を3つ、ご紹介します。
- 全てのコストを算出する
- 数社のメーカーを比べる
- 公的な補助金を利用する
無料で使える電子カルテもあるので、できるだけ導入費用を抑えたいという方は「【最新版】無料で使える電子カルテ3選:失敗しない選び方を徹底解説」を参考にしてください。
全てのコストを算出する
まずは、導入時に必要なコストを算出しましょう。電子カルテの導入時には、システムの導入費以外にさまざまな費用がかかります。実際に導入するとどのくらい費用がかかるのか、事前にしっかり見積もりをとることが必要です。最終的に「思っていたより費用がかさんだ」と後悔しないように、導入前に予算を算出しておくことをおすすめします。
数社のメーカーを比べる
複数のメーカーを比べることを忘れずにおこないましょう。メーカーによって導入時にかかる費用は大きく異なります。すでにメーカーを絞っている方もいるでしょう。しかし、他社メーカーの見積もりを取ることで、希望に合った機能をさらに安く導入できる可能性があります。導入費用を抑えるために一度、いくつかのメーカーをピックアップし、見積もりをとってみてはどうでしょうか。
公的な補助金を利用する
公的な補助金を利用することで、費用を抑えることが可能です。国は「医療分野の情報化の推進について」で説明しているように、電子カルテの普及をめざしています。しかし、費用がネックとなり、導入を踏みきれない医療機関も少なくありません。そのため、電子カルテの導入が促進できるように、公的な補助金制度があります。電子カルテの導入にかかる費用を一部、補助してくれる制度です。導入費用を抑えたいと考えている方は、補助金を活用すると良いでしょう。
補助金に関して、次項で詳しく説明しますので、参考にしてください。
コストを抑える!電子カルテ導入費用の補助金制度2つ
電子カルテの導入費用を抑えたい方は、補助金の利用をおすすめします。
導入に活用できる補助金制度は下記のとおりです。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
医療機関の規模などによって、補助金の額が異なります。いくつか条件がありますが、補助金を活用したい方はぜひ検討してみてください。それでは、それぞれについて詳しく説明します。
IT導入補助金
IT導入補助金を活用することで、費用を抑えられます。「IT導入補助金」は経済産業省と独立行政法人中小企業基盤整備機構によって、おこなわれている補助金です。最大で450万円(補助率1/2~3/4)が補助されます。
IT導入補助金は補助額、補助率、対象経費により、類型に分かれています。
通常枠(A類型) | 補助率2分の1 | 補助額5万~150万円 |
通常枠(B類型) | 補助率2分の1 | 補助額150万~450万円 |
デジタル化基盤導入類型 | ①補助率3分の2 ②補助率3分の4 |
①補助額50万~350万円 ②補助額50万円以下 |
セキュリティ対策推進枠 | 補助率2分の1 | 補助額5万~100万円 |
参考:「IT導入補助金」
補助金を利用することで、導入費用の負担を軽減できるでしょう。
小規模事業者持続化補助金
電子カルテ導入の補助金として、小規模事業者持続化補助金も活用できます。最大で費用の3分の2(最大50万円)が補助されます。
対象 | 小規模事業者・特定非営利活動法人 |
補助額 | 必要な経費の3分の2(上限:50万円) |
具体的な条件や支給内容は時期や政府の政策によって変動する可能性があります。最新の情報を関連する公的機関や「小規模事業者持続化補助金の専用ページ」で確認しましょう。
電子カルテの導入費用を決める要素7つ
コストを抑えるために知っておくべきことは、「費用を左右する要素」です。何にどのくらいの費用がかかるか知っておくことで、無駄な費用をかけずにすみます。
電子カルテの導入費用を決める要素は、下記のとおりです。
- 電子カルテのシステムの違い
- レセコン一体型の導入
- 導入サポートの有無
- ハードウェア購入の有無
- アフターサービスの有無
- カスタマイズの有無
- ライセンスの数
それぞれについて、詳しく解説します。
電子カルテのシステムの違い
電子カルテのシステムには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。前述したように、それぞれシステムによって、導入費用が大きく異なります。
下記は、システムの特徴です。
クラウド型 |
|
オンプレミス型 |
|
導入費用を低く抑えたい方はクラウド型がおすすめです。しかし、セキュリティ面には配慮が必要です。
レセコン一体型の導入
レセコン一体型の電子カルテを導入するかで料金が変わります。クラウド型の場合、一体型の場合でも追加費用がかからないこともあります。一方、オンプレミス型は、一体型を導入することで追加でかかる費用は150万円~200万円です。一体型でなくても、電子カルテだけでも導入することで作業効率は上がるでしょう。しかし、一体型を導入することで、1つの端末でカルテとレセコンの操作がおこなえるなど、業務の効率がさらに上がり、収益アップにつながる可能性もあります。
導入サポートの有無
電子カルテ導入時に、専門スタッフのサポートを依頼することにも費用がかかります。サポートには無償のサポートと有償のサポートがあります。はじめて電子カルテを導入する施設は操作の説明やデモンストレーションなどといった、研修会や説明会も必要となるでしょう。事前に、メーカーよりしっかり説明を聞き、有償サポートを必要な部分だけ入れることで、導入費用を抑えられます。
ハードウェア購入の有無
電子カルテの導入時にはパソコンだけでなく、スキャナーやタブレット端末などの購入が必要となります。
以下のようなものを購入する必要があります。
- パソコン(デスクトップかノートパソコンかによっても料金が異なる)
- マウス
- キーボード
- インターネット回線
- 外付けHDDやSDD
- プリンター
- スキャナー
メーカーに勧められて購入したけど使わなかった、ということがないようにしなければいけません。自施設に必要なハードウェアは何か、どれだけ必要かをしっかり検討し、購入をしていきましょう。また、既存のパソコンやタブレットなどを使用できるかもしれません。導入するシステムが既存の端末に対応できるか確認してみてください。
アフターサービスの有無
導入後のアフターサービスをつけるかで費用が異なります。
メーカーによってアフターサービスはさまざまあり、内容によって値段に差があります。
- サービスの契約期間
- 遠隔サービスの有無
- 専門スタッフの出張サービスの有無 など
どのサービスを依頼するかはきちんと検討することが大切です。万が一、トラブルになった際に業務に支障が出ないように対応してもらうことが必要でしょう。
カスタマイズの有無
カスタマイズの依頼も導入費用を左右する要素です。カスタマイズには、テンプレートのフォーマットの変更などがあります。もちろん、既存の機能だけで業務をおこなえれば問題ありません。しかし、医療機関によっては追加の機能が必要となるでしょう。どのようなカスタマイズを依頼するかしっかり検討しましょう。不要なカスタマイズを依頼しないことが費用を抑えるポイントです。
また、同じ内容のカスタマイズでも、メーカーによって料金が異なります。メーカーを比較する際には、カスタマイズ料金も含めた予算を見積もってもらうことをおすすめします。
ライセンスの数
ライセンス数も費用を左右する要素です。電子カルテのライセンス数とは、同時使用できる人数や端末の数です。ライセンス数が多ければ値段が高くなります。費用を抑えるためには、不必要なライセンス数にならないようにする必要があります。業務内容や勤務しているスタッフの数などを把握し、必要なライセンス数を獲得しておくとよいでしょう。
電子カルテの導入費用を評価!費用対効果を上げる方法2選
ここでは、電子カルテ費用を考えるうえで重要な「費用対効果をあげる方法」について解説します。費用対効果とは、電子カルテの導入にかかる費用と、導入することによって得られる効果や利益との比率です。
電子カルテの導入では、情報の迅速なアクセス、入力ミスの軽減、業務の効率向上、データの分析などが期待されます。導入したことでの効果が利益につながっているかをしっかり評価しましょう。長期的な経営をしていくために重要な視点です。
運用の課題を明らかにする
電子カルテの運用面の課題を明らかにしましょう。電子カルテが施設の運用に合っているか、導入の目的を達成できているか評価します。そして、評価から見えてくる課題を明らかにします。課題がわかれば、課題に関連する時間や人件費の削減に取り組めます。課題を明らかにして、費用対効果を上げましょう。
他の業者にコストを評価してもらう
使用しているシステムを他のメーカーにより評価してもらいましょう。新たな情報を提供してくれ、さらに効率の良いシステムを低価格で導入できるかもしれません。システムの更新時期などのタイミングで、いくつかの業者に見積もってもらうとよいですよ。
電子カルテ導入費用以外で知っておくべきランニングコストを解説!
前述したように、電子カルテの導入時は、クラウド型では10万円〜数十万円、オンプレミス型では300万円〜500万円の初期費用がかかります。さらに、電子カルテを使用することに伴い、費用がかかることをご存じでしょうか?費用を抑えて電子カルテを導入したい方は、ランニングコストも把握しておくとよいでしょう。
ここでは、電子カルテに関するランニングコストに関して解説します。
月額費用
導入費用が無料であっても、月額の利用料金がかかるメーカーもあります。利用料金の相場は10,000円〜40,000円ほどです。オンプレミス型だと保守費用で数万かかることもあります。導入費用を安く抑えたい方は、月額料金についても把握し検討しましょう。
5年ごとにかかる費用
およそ5年ごとにパソコンを買い替えることが推奨されます。買い替える理由は、5年ほどでシステムがバージョンアップするからです。買い替えには1台50万円以上もかかることもあります。
もちろん変更せずに使い続けることもできますが、買い替えを進める医療機関も少なくありません。理由は、コスト面やサポート面を見直したいと考えるからです。費用を安く抑えるためには、買い替えの時期に他のメーカーと比較検討すると良いでしょう。
まとめ
本記事では、電子カルテの相場や導入費用を抑える方法などについて解説してきました。導入することで業務の効率化などを期待できる電子カルテ。費用を抑え導入するためには、システムごとの相場や活用できる補助金について知っておかなければいけません。そして、費用対効果をあげることも、電子カルテの費用を考えるうえで大切です。
電子カルテの導入には、初期費用以外にもさまざまなコストが必要です。長期的な視点も持ち、医療機関に合ったメーカーを選ぶようにしましょう。本記事で紹介した導入費用を抑える方法を参考にし、最適な電子カルテを選んでください。