電子カルテの保存期間とその重要性について細かく解説

医療機器 電子カルテ

電子カルテの保存期間についての理解は、医療機関の運営において重要な要素です。特に、電子カルテの導入が進む現代では、その保存期間や管理方法についての正確な知識が求められます。

本記事では、電子カルテの保存期間やその管理方法について詳しく解説します。また、大府市の前原整形外科リハビリテーションにおける電子カルテの取り扱いについても触れていきます。

電子カルテの導入を検討している医療機関の方、またはすでに導入しているが保存期間や管理方法について詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

電子カルテとは

電子カルテとは

電子カルテとは、従来の紙ベースの医療記録をデジタル化したもので、患者の診療情報を電子的に管理するシステムのことを指します。これにより、医療情報の入力、保存、検索、共有が容易になり、医療の質と効率を向上させることが可能となります。

電子カルテについて、より詳細な使い方を知りたい方は、「電子カルテは難しい?便利な使い方や使いこなすためのヒントを紹介」を読んでみてください。

電子カルテの概要

電子カルテは、患者の診療情報を電子的に管理するシステムで、患者の診療履歴や検査結果、処方情報などを一元的に管理することができます。これにより、医療従事者は患者の情報をリアルタイムで確認し、適切な診療を行うことが可能となります。

また、電子カルテは、医療機関間での情報共有を容易にします。これにより、患者が複数の医療機関を受診する際にも、その患者の医療情報が一貫して管理され、医療の連携がスムーズに行われます。

さらに、電子カルテは、医療情報の保存と管理を効率化します。紙ベースのカルテと比較して、情報の検索や整理が容易であり、大量の紙資料を保管する必要がないため、スペースの節約にもつながります。

電子カルテについては、実際に販売されている会社様の解説を読んでいただければ、より深い理解を得ることができるでしょう。wiseman様の電子カルテとはという記事を参考にしてください。

電子カルテのメリットとデメリット

電子カルテには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。以下に主なメリットとデメリットを列挙します。

  • メリット
  • 情報の一元管理:患者の診療情報を一元的に管理できるため、情報の把握や共有が容易になります。
  • 情報のリアルタイム更新:診療情報をリアルタイムで更新できるため、常に最新の情報を元に診療を行うことができます。
  • 情報の検索性:情報を電子的に管理しているため、必要な情報を素早く検索することができます。
  • スペースの節約:大量の紙資料を保管する必要がないため、スペースを節約できます。
  • デメリット
  • 導入コスト:電子カルテシステムの導入には初期投資が必要であり、そのコストは医療機関の負担となります。
  • システムの維持管理:電子カルテシステムは定期的なメンテナンスやアップデートが必要であり、それらの作業は専門的な知識を必要とします。
  • データの保護:電子カルテはサイバーセキュリティの脅威に晒される可能性があり、患者情報の保護には十分な対策が必要となります。

これらのメリットとデメリットを理解した上で、電子カルテの導入を検討することが重要です。また、電子カルテの導入にあたっては、医療機関の規模やニーズ、財政状況などを考慮する必要があります。

電子カルテの保存期間とその理由

電子カルテの保存期間とその理由

電子カルテの保存期間について理解するためには、まず法的な規定とその背後にある理由を把握することが重要です。

保存期間の法的規定

日本の医療法では、電子カルテの保存期間は紙カルテと同じく5年間と定められています。具体的には、医師法第24条により、診療を行った医師は診療に関する事項を診療録に記載し、その記録を5年間保存しなければならないと規定されています。

この5年間の起点は「診療が完結した日」からとなります。つまり、診療を開始した日からではなく、診療がすべて終わった日から5年間を計算します。

また、医療機関が閉院する場合でも、カルテの保存義務は存在します。閉院した医療機関は、診療が完結した日から5年間、カルテを保管する義務があります。管理者が死亡した場合も、カルテの保管義務は行政機関で継続されます。

保存期間の重要性

電子カルテの保存期間の重要性は、そのカルテが持つ情報の価値によるところが大きいです。電子カルテは、患者の診療履歴や医療情報を詳細に記録したものであり、その情報は患者の健康管理や病状の把握、適切な治療の選択などに不可欠なものです。

また、万が一医療ミスが起こった場合や、医療訴訟が発生した場合には、電子カルテは重要な証拠となります。そのため、法律で定められた期間内は、電子カルテを適切に保存し、必要なときに確認できる状態に保つことが求められます。

さらに、電子カルテの保存には「電子保存の三原則」があります。これは、電子カルテを運用するうえで守らなければならない3つの基準で、「真正性」「見読性」「保存性」を指します。これらを遵守することで、電子カルテの情報が正確であり、いつでも読み取れる状態であり、定められた期間内に保存されることが保証されます。

  • 真正性: 電子記録の虚偽入力、書き換え、消去などが起こらないようにすること、記録作
    成者が誰であるかを確認できるようにすることなどが求められます。
  • 見読性: 電子記録がいつでも読み取れる状態に保つこと、つまり、データが破損していないこと、適切なソフトウェアやハードウェアが利用可能であることなどが求められます。
  • 保存性: 電子記録が法律で定められた期間内に保存され、その期間中にデータが失われることなく、必要なときに確認できる状態に保つことが求められます。

これらの原則を遵守することで、電子カルテは医療機関が提供するサービスの質を高め、患者の信頼を獲得する重要なツールとなります。また、これらの原則は、電子カルテの保存期間が法律で定められている理由の一部を明らかにしています。それは、電子カルテが持つ情報が、患者の健康と安全、そして医療機関の信頼性と品質に直結しているからです。

次のセクションでは、電子カルテの保存期間が遵守されなかった場合の影響について詳しく説明します。

電子カルテの保存方法【期間にも影響!】

電子カルテの保存方法

電子カルテの保存方法は、医療機関の情報管理において重要な要素です。以下に、電子カルテの保存システムとバックアップ・復元について説明します。

電子カルテの保存システム

電子カルテの保存は、医療情報の管理と患者のプライバシー保護の観点から重要です。電子カルテは、診療情報を電子的に保存し、必要に応じてアクセスできるようにするシステムです。

電子カルテの保存システムは、以下の要素を含むことが一般的です:

  • データベース:電子カルテの情報は、患者の個人情報、診療記録、薬剤情報などを含むデータベースに保存されます。このデータベースは、医療機関のサーバー上またはクラウドベースのサーバー上に設置されることが多いです。
  • セキュリティ:電子カルテの情報は、患者のプライバシーを保護するために、厳重なセキュリティ対策を通じて保護されます。これには、データ暗号化、アクセス制御、ネットワークセキュリティなどが含まれます。
  • バックアップ:データの損失を防ぐために、電子カルテの情報は定期的にバックアップされます。バックアップは、別の物理的な場所に保存され、災害やシステム障害からデータを保護します。

電子カルテのバックアップと復元

電子カルテのバックアップは、データの損失を防ぐための重要なプロセスです。バックアップは、定期的に(例えば、毎日または毎週)またはリアルタイムで行われ、データは安全な場所に保存されます。

バックアップの方法は、医療機関の規模やニーズによりますが、一般的には以下のような方法があります:

  • オンサイトバックアップ:これは、医療機関の敷地内にある別のサーバーにデータを保存する方法です。これは、システム障害の場合に迅速にデータを復元できる利点がありますが、災害などで敷地全体が影響を受けると、データの損失のリスクがあります。
  • オフサイトバックアップ:これは、医療機関の敷地外の安全な場所にデータを保存する方法です。これには、別の物理的な場所やクラウドストレージが含まれます。これは、災害などで敷地が影響を受けた場合でもデータを保護する利点があります。
  • クラウドバックアップ:これは、インターネットを通じてデータをクラウドサービスプロバイダーに保存する方法です。これは、データのアクセスと復元が容易で、物理的なストレージスペースを必要としない利点があります。

電子カルテの復元は、データが何らかの理由で失われた場合に、バックアップからデータを回復するプロセスです。復元のプロセスは、バックアップの方法とデータの損失の程度によりますが、一般的には、バックアップからデータを取り出し、必要な場所にデータを再配置することを含みます。

電子カルテの保存とバックアップは、医療機関が患者の情報を安全に管理し、必要なときにアクセスできるようにするために不可欠です。これらのプロセスを適切に管理することで、医療機関は患者のプライバシーを保護し、診療の質を向上させることができます。

電子カルテの保存期間を遵守するためのポイント

電子カルテの保存期間を遵守するためのポイント

電子カルテの保存期間は一般的に5年間とされていますが、その計算は「完結の日」から始まるという点に注意が必要です。

「完結の日」については明確な定義はありませんが、一連の診療が完了した日と理解するのが一般的です。したがって、診療日から5年ではなく、「完結の日」から5年間となります。
(※参照:カルテの保存期間は、いつまで必要かプロが解説。紙や電子情報で違いはあるのか)

保存期間経過後の電子カルテの取り扱い

保存期間が経過した電子カルテの取り扱いについては、医療機関の情報管理ポリシーや法令に従うことが重要です。また、患者のプライバシーを保護するために、適切な方法でデータを削除または匿名化することが求められます。

保存期間内の電子カルテの管理方法

電子カルテの管理には、データの安全性とアクセシビリティを確保するための適切なシステムとプロセスが必要です。これには、データのバックアップと復元、アクセス制御、データの暗号化、セキュリティ監査などが含まれます。

また、電子カルテには「診療録」だけでなく、「療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録」も含まれます。これらの記録は、その完結の日から3年間保存しなければなりません。

さらに、電子カルテには原紙が存在しないため、電子カルテ自体が保管されている文書そのものとなります。そのため、電子カルテのデータ保全とデータの信頼性を確保するために、「電子署名」および「タイムスタンプ」の使用が推奨されます。これらの技術は、「誰が作成したか」「改ざんが無いか」を明確にするためのもので、公的に認められたものを使用しなければなりません。

電子署名・タイムスタンプを利用すれば、スキャン文書を原紙として電子的に保管することが認められます。逆に言えば、電子署名・タイムスタンプがないスキャン文書は原紙とは認められないということです。

電子署名・タイムスタンプのおおまかな流れは以下の通りです。

  1. 院内の情報管理者が専用のICカード等で認証を行う
  2. 上記認証が成功すると、スキャン文書に電子署名とともにタイムスタンプが付与される
  3. 上記スキャン文書を電子カルテに保存する

電子署名が「誰が作成したか」を、署名時刻を担保するタイムスタンプが「改ざんが無いか」を証明します。電子署名においては、厚生労働省の定める準拠性監査基準を満たす保健医療福祉分野PKI認証局若しくは認定特定認証事業者等の発行する電子証明書を用いなければなりません。

また、電子署名を導入した運用については、別途運用管理規定の作成も必須となります。

電子署名は原紙保管が不要となり、大変便利なものです。しかし、データ自体は医療機関にて保管をしなければなりません。サーバやNASといった機器に保存して管理するのが一般的でしょうか。

電子カルテを導入しているならば、電子カルテに電子署名が付与されたPDFファイルを保存する手があります。電子署名が付与されていても、PDFはあくまでPDFですので、通常のPDFファイル同様に電子カルテへ保存を行うことができます。

以上のように、電子カルテの保存期間を遵守するためには、適切なデータ管理と法令遵守が必要です。また、電子署名やタイムスタンプを活用することで、データの信頼性と保全性を確保することが可能となります。

電子カルテの保存期間に関するQ&A

電子カルテの保存期間に関するQ&A

電子カルテの保存期間については、さまざまな疑問や不明点があるかもしれません。そこで、このセクションでは、電子カルテの保存期間に関するよくある質問とその回答を提供します。これらのQ&Aは、電子カルテの保存期間についての理解を深めるのに役立つでしょう。

以下に、電子カルテの保存期間に関する一般的な質問とその回答を示します。

Q1.電子カルテの保存期間は法律で定められていますか?

A1. はい、電子カルテの保存期間は法律で定められています。医療法では、患者の診療録(カルテ)は、その完結の日から5年間保存しなければならないと規定されています。

Q2.電子カルテの保存期間は、患者の病状によって変わりますか?

A2. 一般的に、電子カルテの保存期間は患者の病状によって変わるものではありません。しかし、患者が慢性疾患を持っている場合や、継続的な治療が必要な場合などは、その病状や治療の進行状況を詳細に記録するため、長期間の保存が必要となることがあります。

Q3.電子カルテの保存期間が経過した後、カルテはどのように処理されますか?

A3. 電子カルテの保存期間が経過した後の処理方法は、医療機関により異なります。一部の医療機関では、保存期間が経過した電子カルテはシステムから削除され、データの完全な消去が行われます。一方で、他の医療機関では、保存期間が経過した電子カルテも一定期間保管され続け、必要に応じて参照できるようになっています。

Q4.電子カルテの保存期間は、民法の改正により変わる可能性はありますか?

A4. 民法の改正により、医療過誤による患者側の権利が時効により消滅するまでの期間が変わる可能性があります。これにより、カルテを保存しておくべき期間も変わる可能性があります。具体的には、債務不履行と不法行為のいずれについても、「5年」という時効期間と「20年」という時効期間が設けられました。

電子カルテの保存期間まとめ

電子カルテの保存期間について、その法的規定、重要性、保存方法、そして保存期間を遵守するためのポイントについて詳しく解説しました。電子カルテは医療の質を向上させ、効率的な診療を可能にする重要なツールですが、その一方で、適切な保存と管理が求められます。

法律では、電子カルテは診療終了後5年間保存することが求められています。しかし、患者の病状や治療の進行状況により、さらに長期間の保存が必要となる場合もあります。また、民法の改正により、医療過誤による患者側の権利が時効により消滅するまでの期間が変わる可能性もあります。

電子カルテの保存方法については、医療機関により異なりますが、一般的には、電子カルテシステムによりデータは安全に保存され、定期的なバックアップが行われます。しかし、システムの故障やデータの損失を防ぐためには、適切なバックアップと復元の手順を理解し、適用することが重要です。

電子カルテの保存期間を遵守するためのポイントとしては、保存期間経過後の電子カルテの取り扱いと、保存期間内の電子カルテの管理方法が挙げられます。保存期間が経過した電子カルテは適切に処理され、保存期間内の電子カルテは適切に管理されるべきです。

以上の情報を踏まえ、電子カルテの保存期間について理解を深め、適切な管理を行うことが、医療の質を維持し、患者の信頼を得るために重要であることを再認識してください。

当記事ではお伝えしきれなかった電子カルテについてより詳細な情報を知りたい方は、下記の記事も参考にしていただければ幸いです。

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