クラウド型電子カルテのメリット・デメリットを紹介

医療機器

「普及率はまだまだこれから」という電子カルテですが、電子カルテにも「クラウド型」「オンプレミス型」などの種類があるのはご存じでしょうか。

今回は、普及率が上がってきている「クラウド型」の電子カルテのメリットやデメリットについて解説します。

どんな医療機関と相性がいいのかも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

クラウド型電子カルテとは?

クラウド型電子カルテとは、インターネット回線を利用してサーバー上にデータを保管した電子カルテです。

クラウドとは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略したもので、データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワークを経由して利用する仕組みのことを指します。

現在、スマホやパソコン・ゲームなどはすべてネットに繋がれており、そのサーバーやクラウドと連携することで便利に利用することが出来ています。

医療のICT化が進んでいるためカルテも電子カルテに移行してきていましたが、初期は院内にサーバーを置くオンプレミス型でした。

しかし、既存のインターネット回線を利用したクラウド型が登場してからはクラウド型が注目されるようになったのも事実です。

クラウド型電子カルテのメリット

クラウド型の電子カルテがどんなものなのか説明しましたが、クラウド型の電子カルテにはどんなメリットがあるのでしょうか。

紙カルテとは違う、便利な点が多くあります。

  • 導入コストを抑えられる
  • 院外に持ち出し可能
  • デバイスフリーで使用できる
  • サーバーの障害・災害対策
  • 多職種間・地域連携が可能

5点について、それぞれ解説していきます。

導入コストを抑えられる

初期に登場したオンプレミス型は、院内にサーバーを設置し、機器やプリンターを購入しなければいけません。

一方、クラウド型の場合は院内にサーバーを設置することもありませんし、新たにパソコンやプリンタを購入することもありません。

現在使用しているパソコンも、スペックが対応していればそのまま使用することもできます。

かかる費用としては月額に支払う運用費くらいなので、かなりコストは抑えることが可能となるでしょう。

導入にかかる期間もオンプレミス型と比べるとかなり短期間で済ませることができます。

新規開業する医院は、クラウド型の電子カルテを導入する際はパソコンなどの機器を家電量販店でまとめて購入することが多いです。

まとめて購入するときは家電量販店でも購入価格を値引いてくれる店もあるので、そういったときもコストの削減につなげることが出来るでしょう。

一般的に、オンプレミス型は500~800万円、クラウド型では300~500万円の導入費がかかると言われています。

院外に持ち出し可能

クラウド型の電子カルテは、インターネット環境があればどこでも電子カルテを使用することができます。

それは院外でも該当することで、例えば訪問診療などで患者の自宅や施設に向かったときに電子カルテがあれば、診察をしながらカルテへ書き込みも可能となるので便利です。

「それなら紙カルテでもあまり変わりないのでは?」と思うかもしれませんが、紙カルテを持ち出すのも診察人数によってはかなりの荷物となってしまいます

それに、電子カルテであれば移動中でも難なくカルテ入力ができるので利点と言えるでしょう。

デバイスフリーで使用できる

電子カルテというとデスクトップパソコンを使用するというイメージがあるかもしれませんが、クラウド型の電子カルテはデバイスフリーで使用可能です。

電子カルテの機種によって違いますが、AndroidやiOSに対応している電子カルテであれば、現在使用しているタブレット端末も利用することが出来るので持ちだしやすく、業務の効率化にも繋がります。

デバイスフリーで使用が可能となれば、普段使用しているノートパソコンやタブレット端末での操作ができるので機器操作に対して負担を感じることも少なくなるでしょう。

電子カルテは患者の診療情報を入力するだけではなく、紹介状や診断書を作成するためにも便利なツールです。

緊急時もタブレット端末とクラウドをうまく利用してスマートに対応できることが期待できます。

例えば、自身が学会などで病院に出勤できない際に、タブレット端末で情報共有ができれば出勤医に対して適切な指示が可能となるでしょう。

サーバーの障害・災害対策

日本では、毎年どこかしらで災害が起きているのが現状です。

それが地震なのか水害なのかは地域によって様々ですが、クラウド型の電子カルテはそういった災害対策もなされています。

災害が起きれば、まず考えられるのが停電を考えるでしょう。

停電などが起こってしまうとパソコン等の起動が出来なくなってしまい、緊急時にすぐに対応することが出来ません。

紙カルテの場合ですと、水害などが起きてしまったときはすべてのデータが流れてしまうのでバックアップも取れずじまいとなってしまいますし、他の対応に追われてしまいます。

近年ではクラウドサービスの質も向上しており、災害時や緊急時にサーバー上にバックアップがあるためスピード感をもって対応することが可能となりました。

クラウド上にカルテのデータが保管されているので、データの消失の心配はありません。

またタブレット端末対応の電子カルテであれば、バッテリーさえ残っていればインターネット環境が整えばすぐにでも業務を行うことが出来ます。

多職種間・地域連携が可能

2025年には地域包括ケアが完成する予定でいますが、それまでに各地で地域連携ネットワークが構築されています。

また、同じ医療従事者である医師・看護師・ケアマネジャー・薬剤師・介護支援員などの多職種同士の連携が非常に重要となっているのも事実です。

つまりそれぞれの職種と情報共有することによって地域で高齢者を支えていくという流れになってきており、クラウドシステムは重要なものとなってきます。

これからの医療体制に向けて、多職種間・地域連携が可能なクラウド型電子カルテにするのはメリットであると言えるでしょう。

自動でバージョンアップされる

医療業界では、必ず診療報酬改定が行われますが、その改定に対応できるように電子カルテは必ずバージョンアップする必要があります。

オンプレミス型の電子カルテの場合、メーカーから送られてくるディスク等で手動によるバージョンアップを行う必要があります。

しかし、クラウド型の電子カルテの場合では手動では行わず、業務終了後に自動的にバージョンアップが行われるので手動で何かするという手間を省くことが可能です。

クラウド型電子カルテのデメリット

クラウド型電子カルテにはメリットが多くあることをご紹介しましたが、反対にデメリットとなる部分はあるのでしょうか。

当然良いことばかりではありませんでしたので、3点ほどご紹介します。

  • インターネット環境が必須
  • 月額の運用コストがかかる
  • カルテ操作のタイムラグが起こる

では、それぞれ解説していきます。

インターネット環境が必須

クラウド型の電子カルテの場合、インターネットを経由して利用することが出来ています。

ですので、インターネット環境が整っていないとクラウド型の電子カルテを使用することが出来ません。

現代社会において、病院でインターネット環境が整っていない病院は数少ないでしょうが、中にはインターネットを利用していない病院もあるでしょう。

また、以前大手のインターネット会社で接続障害が起こり、電子カルテシステムがストップしてしまう事態が起きたという事がありました。

インターネット環境さえあれば便利なクラウド型電子カルテですが、インターネット環境がないと業務が成り立たないのはデメリットと言えるでしょう。

そのような想定をして、スマートフォンなどとのデザリングの準備をする・バックアップをしっかりとっておくなどの対策も必要となります。

月額の運用コストが増える

紙カルテと違い、電子カルテというのは「運用費」というものがかかります。

クラウド型の電子カルテはサブスクリプション契約となるので、月額でかかる費用というものがかかってしまうのも事実です。

月額代がどれくらいなのかはそのメーカーにもよりますが、利用するための料金のほかにメンテナンス・更新作業のための「作業料」がかかってしまうので、メーカーによっては金額が高くなってしまう場合があります。

しかし、オンプレミス型のように数年ごとのリプレースはないので更新料のような高額なものはかかりません。

カルテ操作のタイムラグが起こる

カルテの操作を行うためには、インターネットの接続は必須です。

インターネットに接続たうえで確定や更新を行うため、操作のタイムラグが多少なりとも起こってしまいます。

どのぐらいのタイムラグが起こってしまうのかは当然メーカーによってそれぞれ違います。

タイムラグが起こってしまうと、急いで患者情報を確認したくてもなかなか見ることが出来ないと言った不具合が起きてしまいかねません。

患者を待たせるだけでなく、自身の業務がスムーズに行えずもどかしい気持ちになってしまいます。

導入を検討する際にはデモやお試し期間を設けて、操作の速度感や使いやすさを体験してから決めても良いでしょう。

クラウド型電子カルテと相性の良い医療機関

クラウド型電子カルテは利用するのにとても便利なシステムですが、使用すれば相性も良く効率よく業務を行える医療機関があります。

  • 複数の医師が務めている医療機関
  • 老人施設を管理している医療機関
  • 在宅医療や訪問診療を行う医療機関

以上3点に当てはまる医療機関だけというわけではありませんが、今回はこの3つのポイントに焦点を当てて解説していきます。

複数の医師が勤めている医療機関

複数の医師が務めている医療機関では、クラウド型電子カルテは業務の効率化を後押ししてくれます。

一人の患者に対し、複数の医師が診察・診療に対応するとなるとスピード感のある情報共有が必要です。

担当医師が手が離せない・もしくは出勤していないときに患者対応をしなければならないときに、クラウド型の電子カルテがあれば素早い情報共有も可能ですし、的確な指示を出したり受け取ることも出来ます。

仮に電子カルテではなく紙カルテの場合、複数の医師の手書き文字が並ぶことになり、どこが重要な申し送りなのかわからず見落としてしまうことも考えられるのです。

クラウド型の電子カルテであれば、複数の医師が複数のデバイスで情報共有できるので業務が止まってしまうということもないでしょう。

老人施設を管理している医療機関

老人施設を管理している医療機関では、持ち歩き可能なクラウド型の電子カルテはとても便利なツールとなるでしょう。

老人施設は多くの高齢者患者がいるのでその分カルテの量が増えていきます。

また、患者の部屋に診察に向かう際にクラウド型の電子カルテであれば荷物も少なく移動ができますし、診察中に簡単に調べたい情報も検索可能です。

医師だけでなく、看護師もデバイスを手元に置いていれば同時にカルテ確認も可能となるのでそれぞれが情報共有しながら診察に臨めるでしょう。

在宅医療や訪問診療を行う医療機関

在宅診療や訪問診療を行う医療機関は、交通手段として車を使用することが多いです。

患者の自宅や訪問する施設などのアクセス方法が車の方が良いというのもありますが、なにより紙カルテの場合ですと診察する人数によってはカルテが莫大な量になってしまいます。

紙カルテとはいえ、1人の患者に対してのカルテは保管に場所を取りますし、そういったことは病院内や車の中も同じです。

在宅診療や訪問診療を行っている医療機関こそ、クラウド型の電子カルテを使うべきでしょう。

車移動の際にもパソコン・もしくはタブレット端末のみ持っていれば患者の情報は閲覧できますし、すぐにカルテの記入も出来ます。

まとめ

今回はクラウド型電子カルテのメリット・デメリットについて解説しました。

電子カルテにはオンプレミス型とクラウド型があると言いましたが、「絶対にクラウド型電子カルテの方が良い」などとは一概には言えません。

オンプレミス型電子カルテにもクラウド型に負けないメリットがありますし、当然デメリットもあります。

電子カルテを導入する際には、自院が電子カルテに対しどのようなシステムを求めているのかを重点に置いて考えていくのが良いでしょう。

ほかにも導入費の点など検討する点はあるかと思いますが、自分が利用する電子カルテが「本当に自分に相性がいいのか」をしっかり考えて検討してみてください。

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